「男だらけ。ビンタだらけ」嵩(北村匠海)の前に現れた“再会”…その声が別人のようだった【あんぱん第51回レビュー】『あんぱん』第51回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第51回(2025年6月9日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)

戦争パートが本格スタート
女性がほぼ出てこない

 全国的に梅雨入りが近づいてきて憂鬱な季節。『あんぱん』も陰鬱になってきた。

 第11週「軍隊が大きらい、だけど」(演出:柳川強)は嵩(北村匠海)の小倉連隊の日々で、戦争パートが本格的にはじまった。のぶ(今田美桜)はアヴァンの回想のみ。つまり女性がほぼ出てこなかった。

 男だらけ。ビンタだらけ。

 アヴァンだけでもビンタが3回出てきた。本編のビンタの回数は何回だったか。答えは文末に。

 昭和16年(1941年)7月。「勇猛果敢で知られる」小倉連隊は体罰に次ぐ体罰。何かにつけて嵩はビンタされる。第50回では、殴られる場面は音のみだったが、第51回は容赦なく殴られる画が出てくるのだ。

 古参兵・馬場力(板橋駿谷)は最初、やさしげにふるまって油断させておいて、いきなりガツンと。

「地方語は禁止」で軍隊語を使用しないといけない。たとえば「悪くありました」が軍隊語なのだろうか。へんな言葉遣いである。

 いちいちこわい馬場役の板橋は『なつぞら』(2019年度前期)で愛嬌のある番長・門倉を演じていた。今回は正真正銘のコワモテ役。

 馬場は嵩が持っていた井伏鱒二の詩集を「こんなものは必要ない」と踏みつける。タイトルは『厄除け詩集』。彼の井伏鱒二好きは既出であるが、厄除けのお守りに持ってきたのだろうか。