退職金は、多くの方にとって人生で一番大きなまとまったお金かもしれません。厚生労働省の「令和3年賃金事情等総合調査」によると、大企業で働いていた男性の平均退職金は約2230万4000円でした。初めて見る大金が給与口座に振りこまれた瞬間、思わず気持ちが高ぶってしまうのも無理はないですよね。まとまったお金が手元に入ると、早く何かで運用しなければ損だと考えてしまうかもしれません。まずは一呼吸置きましょう。

 ちなみに、金融機関の人々も退職金の存在を見逃しません。「一括払いで保険に入りませんか」「特別な金利を用意しましたので定期預金はいかがですか?投資信託もおすすめですよ」などと、退職の時期に勧誘の電話が次々にかかってくることも多いようです。

 預貯金口座に入った大金は、いったんは何もせず、そのまま放っておいてください。少し時間をおいて冷静さを取り戻すことが大切です。感情が舞い上がっているときに冷静な判断をするのは難しいものです。

 退職後の人生はまだまだ長く続きます。にもかかわらず、投資で退職金をすべて失ってしまったとしたら、取り返しのつかない状況になってしまうので、慎重になりましょう。

退職金を投資に回すのは目的別に管理してから

 仮に退職金で投資を検討する場合は、いくつかの注意点があります。

 まずは、退職金の全額を投資に使わず、目的別に分けて管理してください。目的ごとに口座や金融商品を分けておけば、気づかないうちに大切なお金が減ってしまうことを防ぐことができます。

 まず、ご夫婦ならば、それぞれ500万円程度を介護や医療のために確保しておくことをおすすめします。また、お子さんがいらっしゃる方であれば、子どもの結婚資金や住宅購入の支援などを考えることもあるでしょう。また、自宅のリフォーム費用なども別に分けて考えておくと安心できます。

 それらのライフイベントに備えてまとまったお金を残しておきつつ、退職金を投資に回すように心がけてください。退職金は老後を安心して暮らすための貴重な資金です。何よりも冷静な判断が大切です。

 ゆっくりと落ち着いて計画的に自分のこれからの人生に役立つようなお金の使い方や運用方法をじっくり考えてみてくださいね。