
「もし離婚したら、私の年金はどうなる?」――そんな疑問を抱く人が増えている。特に、子育てを終えた女性からの相談は年々増加中。離婚しても経済的に自立できる人が増える一方で、年金分割の仕組みは意外と知られておらず、実際に申請件数は離婚件数のわずか6分の1。「夫の年金は半分もらえる」と誤解しているケースも多い。知らないと損をする年金分割のポイントを、お金のプロが分かりやすく解説する。(社会保険労務士 井戸美枝)
中高年から増える相談
「離婚後の年金」
ファイナンシャルプランナーとして、家計の相談にのってきました。その中で、この10年間で徐々に増えてきている相談があります。それは、離婚後の年金はどうなるかというものです。
相談者には、子育てがひと段落した女性が多く「今すぐ離婚を考えているわけではないけれど、仮に離婚したら年金はどうなるのか?」と考えている人が増えている印象です。
ひと昔前は、専業主婦として家庭内労働に従事するケースが多く、経済的な理由から離婚できない人も少なくありませんでした。共働き世帯が増えた今、離婚しても経済的に自立できる人が増えています。人生の選択肢が増えたことは良いことですが、それに伴い離婚したときの年金について知りたい人が増えているのでしょう。
離婚すると年金はどうなるのか。結論から述べましょう。婚姻していた夫婦が離婚すると「年金分割」という制度に基づいて、年金が分割されます。
ただ、この年金分割はあまり知られていないようです。離婚した件数に対して、年金分割の申請件数は1/6程度。離婚数は年間18万件ほどですが、年金分割の申請件数は3万件あまりです(厚生労働省「2023年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況年度)。
また、相談に来られた女性の中には、「夫の年金を半分もらえる」と誤解しているケースも多々ありました。
本稿では、(1)年金分割の仕組み、(2)よくある誤解と注意点、(3)分割後の年金見込み額を確認する方法をご紹介します。