働く喜びを
実感する日がやってくる

名和:最後のテーマに移ります。組織の未来はまだ深い霧に包まれている。では働き方、そして生き方は、これからどう変わるのでしょう。

ヘンリー:いま、悲観的な未来が語られることが多いですね。たとえば、日本では「深刻な人口減少」(depopulation)が社会課題として取りざたされています。でも、発想を転換すれば、それは大きな機会をもたらすかもしれませんよ。

名和:そのココロは何でしょう。

ヘンリー:先日会った日本の法学教授は、少子化は大きなチャンスにつながると言うのです。人口減少は障害者や女性、高齢者などの困難に直面したり孤立している人々を浮き彫りにし、彼らが社会により深く溶け込むきっかけとなる可能性があるからです。

 彼女は、過疎化問題を研究していると言っていました。そして過疎化は、不利な立場に置かれたり、社会から疎外されている人々に光を当て、彼らが社会の中で活躍する機会を提供するようになると言うのです。

ヒロシ:私が移住した2008年当時、隠岐諸島の一つ海士(あま)町は深刻な人口減少や財政破綻の危機に直面していました。行政や民間企業の挑戦に私たちの会社も参画し、小さな島の総力戦として持続的な未来づくりに取り組み始めました。様々な挑戦の結果、UターンやIターンの人たちを惹き付けることができて、人口減少を食い止めることができ、財政破綻も免れました。これも社会の二極化に抗い、「Rebalancing Society」 を実践する取り組みにほかならないと思います。

ヘンリー:いままで疎外されていた人たちに、新しい働く喜びを提供することができるようになる。危機が機会に変わる。このように複数の視点を持つことが、とても大切なのです。