野口:大変かもしれないけれど、それこそがバネみたいなものになって大きな成果があるという思いが染みついています。おそらく、これはある年齢以上の日本人に共通する一般的な現象だろうと、僕は今、強く感じています。
大江:そうですね。私たちの世代は、時にはプレッシャーも必要だと言われて育ってきた気がします。
野口:プレッシャーにも、いいプレッシャーと悪いプレッシャーがあるという考え方があります。悪いプレッシャーだとつぶれてしまうけれど、いいプレッシャーは必要だと、とくに会社の経営者などはよくそうおっしゃいます。
けれども、プレッシャーはやはりプレッシャーであり、つまりはストレスです。大なり小なりやはりストレスであって、ストレス耐性は人によって違う。
だから、プレッシャーを与えることで成長するというのは、とくに昭和マインドでは当然の考えではあったかもしれませんが、それがそもそも本当に正しかったのかというのが、当事者研究(編集部注:自分で自分の経験・障害・病気などについて、客観的に見直す手法の研究のこと)を通じていろいろな形で感じている疑問です。
誰の心も簡単に
折れてしまう時代だから
野口:今は皆、等しく心が折れる時代です。この人は強いから大丈夫というのはもうあり得なくて、誰の心も折れる時代になっている。もしかしたらずっと以前からそうだったのかもしれませんが、うまく気を紛らわすとか、違うところで力を発揮するとか、あるいは社会としてのいいサポート体制があったとか、そういうことでなんとかなっていたのではないでしょうか。
けれども、今はみんなプレッシャーを感じると簡単に心が折れると思ったほうがいいぐらいです。プレッシャーに対するストレス耐性がどんどん落ちている状況で、成長戦略としてのプレッシャーがあること自体を見直さなくてはならないと感じています。