野口:新入社員が入社式の日の午後に退職願を出して人事部が慌てているという話も聞きますが、それぐらいまでストレスレベルは下がっているわけです。入社式の社長の話がおじさんくさかったから辞めますと言われてしまったと聞いたこともあります。そんな状況は、社会としてサステナブルではないですよね。

大江:けれども、私たちのほうがそのストレスレベルに合わせなくてはいけないのかなという疑問も湧いてきます。

野口:そこに合わせないといけないのか、それともプレッシャーを与えること自体がいいことなのかということも含めて見直していかないといけないということかもしれません。

 もっとも、みんながみんな優しくなれというわけではないんですね。若い人が会社を辞める理由の1つはブラックだからですが、もう1つ、ホワイトすぎるからというのもあります。いわゆるホワイトハラスメントですね。こんなぬるい会社ではスキルアップできないという理由で、つまりノーストレスも嫌なわけです。「じゃあ、どうせえちゅうねん」というのが、おじさんとしての言い分になるわけですが。

大江:難しいですよね。そんな状況に遭遇したら、いったいどうすればいいのでしょう。

テレビ局では入社直後から
大きな仕事が……

野口:成長のための手段がプレッシャーを与えることだというのが、少なくとも常に正しいわけではないと理解しなくてはならないのでしょうね。一方で、自分を成長させてくれない環境も嫌なわけです。つまり、ストレスが低いことと緊張感がないことは、明確に別物であるということです。

 ストレスレベルをどこにもっていくかはさらに難しいことではありますが、いずれにしても、ストレス耐性が極端に下がっていることは認識しておいたほうがいいでしょう。働く現場で誰かの体や心が悲鳴を上げている時、今は働き方改革でうまく抑えようとしているはずですが、そもそも悲鳴すら上げられないこともあります。