だが、私はひそかに案じていることがある。実は、いま大相撲の中にはいない、とんでもない逸材が存在するからだ。もしこの選手が白鵬と行動を共にしたら、新組織はスター候補を手に入れることになる。

界隈で注目されている、現横綱・大の里のライバル

 私が注目している人材とは、2020年全日本相撲選手権で優勝を飾り、大学1年生でアマチュア横綱に輝いた花田秀虎。2022年のワールドゲームズ・男子重量級決勝では、日本体育大学の1年先輩である中村泰輝(現横綱・大の里)に勝って優勝している。いわば大の里の最大のライバルだった力士だ。

 だが花田はワールドゲームズ優勝を最後に、かねてからの夢だったアメリカンフットボールに挑戦するため、日体大を中退し、相撲をやめてアメリカに渡った。現在はコロラド州立大でプレーするアメリカンフットボール選手だ。彼がNFLへの夢をかなえるのか、再び相撲界に戻ってくるのか、私はずっと動向に注目していた。

 今回の白鵬の転身が、花田の将来に変化を与える可能性は大いにありえる。そうなれば、白鵬の構想には確かなスター候補が加わり、机上の空論ではない確固たるビジョンとなる。日本の相撲界にとって、脅威になりえることを覚悟しておくべきだろう。

 熱心な相撲ファンとしては、日本相撲協会にも深い縁があり、まもなくアマチュア相撲を統括する日本相撲連盟の会長就任が噂されるトヨタ自動車・豊田章男会長が白鵬の支援を表明していることも安心材料だ。

 記者会見であえて「豊田章男さんは私のことを友人だと。いつでも応援してもらったり」と実名を挙げたのは、日本相撲協会と険悪ではない空気を醸す目的があったのではないかと私は感じた。

 白鵬の新事業が、日本相撲協会との対立構造でなく、互いに相撲の発展のため相乗作用を起こす関係であるよう願うばかりだ。しかし、これまで多くのトラブルが勃発してきた相撲界だから、まだまったく予断を許さない。

白鵬をにらむ朝青龍 Photo:Sports Nippon/gettyimages