
近年価格が上昇し続けている都心部のタワーマンション。富裕層にとっても、魅力的な投資先の一つだった。しかし今、状況が変わりつつある。価格高騰が続く中で、一部の富裕層は次の投資先を探し始めているのだ。(アレース・ファミリーオフィス代表取締役 江幡吉昭)
都心タワマンの高騰
終わりの始まり?
アベノミクス以降、都心のタワーマンションは富裕層の“住まい・節税・資産運用”の象徴として機能してきました。
しかし、日本の金利が上昇し始め、米国ではトランプ再選により相互関税政策が進められる中、長らく高騰が続いてきたタワマン価格も、調整局面に差しかかる可能性が高まっています。
都心のタワマン価格高騰の裏で、富裕層は次の投資先を静かに探り始めているのです。
アベノミクスが始まった2012年、東京のタワーマンションの価格は相対的に割安でした。
ニッセイ基礎研究所のレポートによれば、東京23区のタワマン価格指数(2005年=100)は、2024年時点で312.4に達しています。実に3倍超。また、2023年の東京23区の新築マンション平均価格は1億1483万円と、前年から約40%も上昇しており今も、この勢いは続いています。
この価格高騰の背景には、マンションデベロッパーのブランディング力はもちろんのこと、日銀の異次元緩和、海外投資マネー、そして「節税対策としてのタワマン購入」という日本独自の動機がありました。
しかし、足元ではその環境に変化が生じています。
ご存じの通り、トランプ関税ショックで日経平均株価は4月に瞬間的に年初来高値から2割強下落し、一時3万2000円を割りました。今も高値は超えておらず、3万7000円台で推移しています。
不動産は流動性が低く、景気の遅行指数的なもの。これを踏まえると、今後もこれまでのような価格高騰の流れが続くとは思えません。
私は、今後10年程度は、世界のゲームのルールが大きく変わる変革期として、今までの常識を捨てるべきと考えています。