しかし、犯罪者はやみくもにターゲットを決めているのではない。検証のために、強盗や連れ去りなどの発生現場に赴くと、毎回犯罪者の抜け目のなさを痛感する。「入りやすく見えにくい場所」を正確に選んでいることがわかるからだ。

 実際に発生した事件現場の周辺環境から、なぜこの場所が狙われるに至ったかを読み解いてみたい。

犯罪者はなぜその「場所」に目を付けたのか

 2022年5月から23年1月にかけておきた「ルフィ広域強盗事件」のひとつで、大網白里市のリサイクルショップが狙われた。

 2023年1月12日、閉店間際のリサイクルショップに「19時過ぎに店に行く」との電話が入る。本来19時閉店だが、70代の男性店長は店を開けて客を待つことにした。

 すると1人でやってきた男は、いきなり店長を殴り、次に入ってきた男も加わって2人で店長に「金庫はどこだ」と言いながら暴行を加えた。

 店長が抵抗し、防犯ベルも鳴ったため、犯人は消火器をまいて逃亡。わずか2分ほどの出来事だった。

人目が少ない場所は「見えにくい」

 閉店時間以降の訪問であれば一般客と鉢合わせる心配はない。犯人はその時間に来店する約束を取り付けて店内を「見えにくい場所」にした。

 1日の営業終了時には、その日の売り上げが現金で残っている可能性が高い。業務上、買い取りに備えてある程度の現金を準備しているだろう。

 仮に現金がなくてもリサイクルショップであれば金券、宝飾品、ブランド物といった「金目のモノ」があるはずだから、それらを根こそぎ奪っていけばいい。

車を停めても違和感がない場所は「入りやすい」

 店舗があるのは2階建ての建物の1階。1階にはこの店舗のほかに不動産会社も入っていて、2階は賃貸アパートになっている。

 建物の隣には駐車場があり、リサイクルショップの来店客専用駐車スペースがある。

 駐車場がアパート住民専用なら、見慣れない車が駐車していると目立って仕方がないが、「来店客専用」であれば、そんなことはない。

 つまり、下見や犯行時に堂々と車を停めることも可能なわけで、店舗を「入りやすい場所」にしているといえる。

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『最新防犯理論が解き明かす 犯罪者が目をつける「家」』より 拡大画像表示