もちろん、人生を大きく変えるような刺激になる場合もあるでしょうが、それは稀なケースといえるでしょう。
だからこそ、〈アウェイの世界に飛び込む〉こと、そこで一定の時間を過ごすことが大事になってきます。
そしてそれがしやすいのは、ある程度時間に融通が利く大学時代です。
「アウェイの世界」に飛び込むと
どんな変化が起こるのか
大学でのアウェイ経験がいかに効果的なのか。それを知るためのひとつの事例を紹介したいと思います。社会学者の仁平典宏さん(東京大学教授)の経験です。
東京大学のWEBサイトには、構成員としての教員、研究者について、論文や著書だけではわからない側面からの紹介を試みるUTOKYO VOICEというページがあります。2018年から2021年にかけて、100人の教員・研究者を紹介していますが、そこに仁平さんの経験に関する記事をみつけることができます。
以下、少し長くなりますが、記事の一部を引用したものです。
(…)国が福祉施策を民間に委ねる新自由主義が時代の潮流となっている今、ボランティアなどの社会参加の動きがなぜ広がっているのか。その問題をボランティアに関する100年の言説の変化から実証した仁平も、かつては社会に関心のない1人の青年だった。
大学に入って社会学に関心を持ったが、何を研究すべきか決まらない。
「身の回り3メートルのことしか考えずに生きてきたので、社会に対する問題意識が持てず、政治的活動に勤しむ同級生を白い目で見るシニカルな学生でした」。
困った仁平は人類学の教授の「自分にとって一番遠い世界に行きなさい」という助言を受け、知的障害児の施設にボランティアとして通い始めた。
その中で、ボランティア活動に邁進する周りの若者たちもまた、政治や社会に特別関心があるわけではないことを知る。卒業論文では自分を投影するかのように、政治に関心のないボランティアについて書いた。
大学院に入ってからは、政治に対する無関心の背景を知りたくなった。手がかりになったのはやはりボランティアだ。活動の性質が昔と変わってきているのではないか。仁平はそう気づいた。