クランボルツ氏が根拠としているのは、アメリカの社会人に実施した調査データです。分析の結果、18歳時点でなりたいと思っていた職業についた人の比率はわずか2%であること、ビジネスに成功した人の8割が、偶然の出来事によってキャリアのターニングポイントを迎えたと考えていることがわかりました。
こうした知見を踏まえて提唱されたのが「計画的偶発性理論」です。
偶然出会う事柄や他者によってキャリアは構築される。他方でクランボルツ氏は、ただ待っているのではなく、偶然が意図的に生じるように自ら行動し、周囲に目を向けることが大事だと強調します。
広く世界を見渡せば、キャリアプランがあったからこそ道を切り開くことができたという人もいるでしょう。
とはいえ、エビデンスに基づいたクランボルツ氏の理論は、やはり看過できないように思います。

そして本稿の議論に即して強調したいのは、クランボルツ氏の「偶然が意図的に生じるように自ら行動する」という考え方が、〈アウェイの世界に飛び込む〉こととおおいに重なり合う可能性がある点です。
また、「周囲に目を向ける」という行動も、アウェイの環境にいるときのほうが、より意識的に行えるのではないでしょうか。
誤解がないように断っておくと、アウェイの世界に飛び込んだからといって、必ずしも「偶然」に出会えるわけではありません。
ただ、出会う確率は格段に高まるように思います。事象Aが起きたときに事象Bが起こる確率を「条件付き確率」と呼びますが、確率を高めるための条件を整備するという考え方は、行動を決めるうえでの重要な指針となるはずです。