計算結果は729兆円です。物価が1.4倍になるので、実質GDPは1.2倍になるだけで現在の1.6倍に相当する名目GDP目標が達成できるのです。これは、16年間で年率1.0%の経済成長をすれば到達できる数字です。

 自民党の公約がどのような前提で組み立てられているかはわかりません。ですが、日銀も政府も年2%のインフレが定着することを目標として動いていますから、石破首相の公約が実質的には年率1.0%の経済成長を前提に組み立てられているだろうという推測は論理的です。

 しかし、しかしこれからの16年間、年率1.0%で経済を成長させ続けることなどできるのでしょうか?

 それを考えるために、逆に過去16年間の経済成長がどうだったのかを見てみましょう。ここからは国際比較のため暦年で数字を分析します。

 2008年から2024年までの日本の経済成長率は年率0.4%でした。ということなら、過去と比べて2.5倍ぐらい高い経済成長目標を達成できなければ、自民党の公約は絵に描いた餅で終わります。

「そうは言っても2009年にはリーマンショックが起きているし、2020年からはコロナ禍で経済が停滞しているから、この時期を引き合いに出すのはフェアとはいえないんじゃないのか?」

 というご意見もあるかもしれません。

 そこで同じ16年間に他の先進国がどうだったのかを見てみましょう。それぞれ自国通貨で計算した実質GDPの成長率を比べると、アメリカは2008年から2024年にかけて年率2.1%で成長しています。リーマンもコロナもアメリカにとってはそんなの関係ねぇという成長ぶりです。

 G7の他の比較しやすい国でみると、同じ16年でイギリスが年率1.2%、フランスが0.9%です。要するにこういったまともな先進国並の経済成長が実現できれば自民党の掲げる公約は達成できます。できないことではない気がしてきますよね。

 その他のG7を全部挙げるとカナダが1.7%、イタリアが1.8%、ドイツに至っては3.2%ですから、政治家がちゃんと国を運営すれば年平均で1.0%は逆にとても低い目標にすら見えてきます。

 さて、日本は過去16年間で年率0.4%とG7の中で最低の経済成長率だったと申し上げましたが、実はこの16年間を3つの期間に分けてみると日本で起きたことがさらにはっきりと理解できます。