「自力整体」とは、整体師がおこなう技法を自分で実践できる人気の健康法です。現在、1万5000人以上が実践。「久しぶりによく眠れた!」「便通が良くなった!」「長年の慢性痛から解放された!」といった喜びの声が続々と届いています。このメソッドをまとめた矢上真理恵さんの著書『すぐできる自力整体』も好評。
今回は矢上真理恵さんにマリオネットライン・目の下のたるみ解消に役立つ自力整体についてお話をうかがいました。
監修:矢上 裕 矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家
(写真/榊智朗 構成/依田則子)

顔のたるみの原因は“体の前側の詰まり”?
――梅雨の時期になると、体が重だるく感じたり、顔のむくみやたるみがいつも以上に気になる方も多いのではないでしょうか。そんなとき、東洋医学の視点からは、どのようなケアがおすすめでしょうか。
矢上真理恵(以下、矢上):湿度の高いこの季節は、体内のめぐりが滞りやすく、美容面にもさまざまな不調が現れやすくなる時期です。
私の教室でもこの時期、体のお悩みとあわせて、「マリオネットラインが気になっていて…」とか「目の下のたるみがなかなか取れなくて…」といったご相談をいただくことが多くなります。
じつは、東洋医学の考え方では、このような顔のトラブルには、胃の経絡(けいらく)=「胃経(いけい)」が深く関わっているとされているんですよ(*胃経の図解は最後に紹介します)。
――経絡というとよく耳にしますが、改めてどういったものか教えていただけますか?
矢上:はい、もちろんです。経絡というのは、東洋医学で考えられている「気」(エネルギー)や「血(けつ)」(体を養い潤すもの)の通り道のことをいいます。
全身には12本の主要な経絡があり、内臓や手足、さらには顔や頭までつないでいるんですね。いわば、体の中に張りめぐらされた道筋のようなものと捉えていただくとよいかと思います。
この道筋が詰まったり、滞ったりすると、エネルギーや栄養のめぐりが悪くなり、むくみ・たるみ・しわなどの不調や老化のサインとして表に現れてきてしまうのです。
とくに女性は、年齢を重ねたり、季節の変わり目、ホルモンバランスの変化によって、このめぐりが滞りやすくなる傾向がありますので、定期的に整えてあげることがとても大切になってきます。
「胃経」のめぐりを整えると顔が若返る?
――なるほど。とくに今回関わるのは「胃経」なんですね。
矢上:はい、そうなんです。「顔の悩みは胃経で整える」というのが、東洋医学での基本的な考え方のひとつです。胃経は、顔のむくみやたるみ、しわに大きく関わる経絡で、鼻の横からはじまり、のど・胸・胃・太ももの前を通り、足の人差し指まで続いています。
この胃経が滞ってしまうと、顔の筋肉も下に引っ張られるようになり、「マリオネットライン」や「目の下のたるみ」ができやすくなってしまうんですね。
さらに、梅雨時のむくみ・だるさ・めまい・関節痛といった不調も、この胃経のめぐりの悪さと関わっていることが多いと考えられています。
1分でできる「胃経ケア」おすすめワーク
――それを自分で整えられるのが、自力整体なんですね。
矢上:はい、そうなんです。とくにおすすめしているのが、1分でできる「あおむけの割座」というワークです(*ワークと画像は最後に紹介します)。
太ももの前側と、大腰筋(背骨と骨盤をつなぐインナーマッスル)をじんわりと伸ばすことで、胃経の詰まりをゆるめ、顔まわりもすっきりと整いやすくなります。
便秘や下腹のぽっこりも改善しやすくなりますし、生理不順やPMS、更年期に伴う不快な症状の緩和にもとても効果的なんですよ。
食の乱れも胃経のめぐりを乱す
ちなみに、夜遅い食事や食べ過ぎが続くと、胃経のめぐりが悪くなり、顔のむくみやたるみだけでなく、胃下垂やバスト、ヒップラインの下がりも引き起こしやすくなります。 ですから、自力整体で整えるのはもちろん、食事のタイミングや量にも気を配りながら、内側からも美しく整えていきましょう。
顔や体の変化にやさしく気づいて
――最後に、美と若さを保つヒントを教えてください。
矢上:年齢を重ねるほどに、顔や体に現れるサインは、体内のめぐりの滞りの表れでもあります。
鏡を見るたびに「老けたな」と落ち込むのではなく、「よし、胃経を整えよう」と前向きに自分に優しく働きかける時間を、ぜひ自力整体を通じて取り入れてみてください。
ほんの1分でも自分を整える習慣が、きっと未来のあなたを支える力になってくれるはずです。
書籍『すぐできる自力整体』にも、今回ご紹介した胃経のめぐりを整えるワークや、加齢による顔のたるみ・むくみのお悩みに役立つセルフケア法をたくさん掲載していますので、よろしければご覧になってみてくださいね。
では最後に、胃経を整え顔のたるみ解消に役立つ「あおむけの割座」のワークを紹介しましょう。
胃経を整え顔のたるみ解消に役立つ「あおむけの割座」のワーク
画像を見ながらおこなうとわかりやすいでしょう(※画像は書籍『すごい自力整体』より抜粋)。


◎「あおむけの割座」のワーク
※「あおむけ」が難しいご高齢の方、骨や関節などに変形のある方や治療中の方、痛みのある方、妊娠中の方は、実践を控えましょう
【手順1】
◆割座になる
◆ふくらはぎを手で外側にねじり出す
※ひざに痛みを感じる人は、ムリはしないようにしましょう
【手順2】
◆割座の状態から、床に両ひじをついて、ゆっくり後ろに倒れる
◆その後、ゆっくり床に背中をつけていく
※体が硬く、痛みのある人は、片足をのばしてもOKです
【手順3】
◆背中が床についたら、両手をバンザイする
◆ひざはなるべく閉じて、ひざを床に押しつけようとする
◆深呼吸をして、しばらく状態をキープ
※肩・腰・ひざが痛い人は、ムリをしないようにしましょう
※太ももと大腰筋(大腿骨と背骨をつなぐ筋肉)ののびを感じたら正解です
※太ももをのばすと腸の経絡も刺激されるため、排泄もよくなります
【体が硬くて背中が床につかない人は……】
◆背中をクッションでサポートしましょう
◆両手で足首をつかむとラクになります
時間に余裕のある時は、書籍『すぐできる自力整体』で紹介している「驚くほどほぐれる4つのコース」(QRコードからスマホで視聴できる動画つき)もフェイスラインのリフトアップに役立ちます。
※『すぐできる自力整体』では、この他にも、整体プロの技法を使って、コリや痛み、ゆがみを解消するワークを多数掲載しています(★35分の動画も収録)。

矢上予防医学研究所ディレクター
1984年、兵庫県生まれ。高校卒業後単身渡米、芸術大学プラット・インスティテュートで衣装デザインを学び、ニューヨークにて独立。成功を夢見みて、徹夜は当たり前、寝るのはソファの上といった多忙な生活を続けた結果、心身のバランスをくずし動けなくなる。そのとき、父・矢上裕が考案し約1万5000名が実践している「自力整体」を本格的に学び、心身の健康を取り戻し、その魅力を再発見。その後、自力整体ナビゲーターとして、カナダ、ヨーロッパ各地、イスラエルにて、クラスとワークショップを開催。さらに英国の名門セントラル・セント・マーチンズ大学院で「身体」をより体系的に学び、2019年に帰国。現在、国内外の人たちに自力整体を伝えながら、女性のための予防医学をライフワークにしている。著書に、『すごい自力整体』(ダイヤモンド社)がある。
監修者:矢上 裕(やがみ・ゆう)写真右
矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家
1953年、鹿児島県生まれ。関西学院大学在学中の2年生のとき、予防医学の重要性に目覚め、東洋医学を学ぶため大学を中退。鍼灸師・整体治療家として活躍するかたわら、効果の高い施術を自分でできるように研究・改良を重ね「自力整体」を完成。兵庫県西宮市で教室を開講、書籍の出版やメディア出演などで注目され、全国から不調を抱える人々が続々と訪れるようになる。現在約500名の指導者のもと、約1万5000名が学んでいる。著書に『自力整体の真髄』『はじめての自力整体』(ともに新星出版社)など多数。遠隔地の人のために、オンライン授業と通信教育もおこなう。 写真/榊智朗