「自力整体」とは、整体師がおこなう技法を自分で実践できる人気の健康法です。現在、1万5000人以上が実践。「久しぶりによく眠れた!」「便通が良くなった!」「長年の慢性痛から解放された!」といった喜びの声が続々と届いています。このメソッドをまとめた矢上真理恵さんの著書『すぐできる自力整体』も好評。
今回は矢上真理恵さんに梅雨の不調と水毒の解消に役立つ自力整体についてお話をうかがいました。
監修:矢上 裕 矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家
(写真/榊智朗 構成/依田則子)

【整体のプロが伝授】「水毒」は不調のはじまり? 余分な水を流す「たった一つの習慣」

梅雨は「水毒」に注意!

――今日は、梅雨時期の不調についてお話を伺います。この季節、なんとなく体が重だるいとか、むくみや頭痛に悩まされる人も多いですよね。

矢上真理恵(以下、矢上):そうなんです。この時期になると、生徒さんからも「体がだるくて起きるのがつらい」「雨の日は関節が痛む」といった声をよく聞きます。

じつはこれ、東洋医学でいう「水毒(すいどく)」が関わっていることが多いんですよ。

――水毒、ですか。あまり聞き慣れない言葉ですが、どういった状態なのでしょう?

矢上:東洋医学では、湿気の多い季節になると体の中に余計な水分がたまりやすくなると考えます。これがめぐりを悪くし、むくみ・冷え・頭痛・めまい・関節痛など、いろいろな不調を引き起こすんですね。

汗や尿として排出されずに水が体に停滞すると、血流や内臓の働きも鈍くなって、さらに疲れやすくなったり免疫力も落ちたりします。

「水毒」のサイン、ありませんか?

――水毒がたまっているサインは、どんなものがありますか?

矢上:たとえば、こんな症状です。

・朝起きたとき顔や手足がむくんでいる
・雨の日に関節が痛む
・めまいや耳鳴りがする
・なんとなく疲れが抜けない

当てはまる方は、体の中に余分な水分が滞っているサインかもしれません。

水毒を流すには「筋肉を使うこと」

――どう対策すればいいのでしょう?

矢上:一番のポイントは、筋肉を動かすこと。体の水分は、筋肉がポンプのように働くことでめぐっています。とくに下半身の筋肉をしっかり使うと、滞っていた水が流れて排泄されやすくなります。

ただし、激しすぎる筋トレは逆効果。東洋医学ではかえって「気」を消耗するとされています。

自力整体のように、心地よく筋肉を刺激しながら動かすことが大切です。
3分程度の軽い動きでも、めぐりが良くなって体が軽くなるのを実感できますよ。

ちなみに、自力整体の教室でも、水のめぐりが良くなることで、レッスンの途中でトイレに行きたくなる生徒さんが多くいらっしゃいます。
さらに終わるころには体がすっきりと軽くなり、晴れやかな表情で元気に帰宅されます。

家事も「水毒ケア」になる

――普段の生活でもできる動きはありますか?

矢上:たとえば、床拭きや窓拭きなども、とても効果的なんです。しゃがんだり、腕を伸ばしたり、自然と筋肉が使われるので、じつは梅雨の水毒ケアにはぴったりなんですよ。

ちなみに、「一日に〇リットルの水を飲みましょう」と言われることもありますが、喉が渇いていないのに無理にたくさんの水を飲むのは、かえって体に負担になることもあります。必要以上の水分は体に溜まりやすくなり、不調の原因になることもあるんです。自分の体の声を大切にして、無理なく心地よく水分をとってくださいね。

自宅でできる「腰持ち上げ」のワーク

――自宅で簡単にできるおすすめのワークはありますか?

矢上:「腰持ち上げ」のワークはとても簡単です(*ワークと画像は最後に紹介します)。足腰の筋肉をじんわり刺激し、余分な水分を流しやすくする動きです。むくみだけでなく、肩コリ・腰痛のケアにもなります。

――ちなみに、梅雨のこの時期にぴったりのケアや動きも、本で紹介されているのですよね?

矢上:はい。著書『すぐできる自力整体』には、梅雨の水毒対策に使える、めぐりを整える動きや、肩コリ・冷え・むくみ・腰痛ケアのワークも動画つきで載せています。じつは今回ご紹介する「腰持ち上げ」のワークも、その中のひとつ。

動画を見ながら一緒にできるので、「自力整体って難しそう」と思っていた方にもすごく好評です。たった3分でスッキリする動きもあるので、忙しい方にもおすすめですよ。

「体が重だるいな」と感じたその日に、すぐ開ける本として、ぜひ手元に置いてもらえたら嬉しいですね。

心と体の余白をつくる時間を

――梅雨の時期を元気に過ごすためのアドバイスをお願いします。

矢上:不調は体からの大事なメッセージ。「ちょっと体をゆるめてあげようかな」と感じた時がケアのタイミングです。呼吸を深めたり、簡単な動きでめぐりを整えたり、そんな時間を持つことで心も軽くなります。

この季節を心地よく乗り切るために、ぜひ自力整体を日常に取り入れてみてくださいね。

最後に、水毒を解消する「腰持ち上げ」のワークを紹介しましょう。

水毒解消! 「腰持ち上げ」のワーク

画像を見ながらおこなうとわかりやすいでしょう(※画像は書籍『すぐできる自力整体』の「あおむけで骨盤調整20分コース」より抜粋)。

【整体のプロが伝授】「水毒」は不調のはじまり? 余分な水を流す「たった一つの習慣」
【整体のプロが伝授】「水毒」は不調のはじまり? 余分な水を流す「たった一つの習慣」

◎「腰持ち上げ」のワーク(※タオルを準備)

【手順1】
◆あおむけになり、ひざを立てる(足幅は開いてもOK)
◆タオルを足首の甲の前に引っ掛ける

【手順2】
◆タオルの両端をつかみ、引き寄せながら、腰をゆっくり持ち上げる
◆腰をぐ~っと持ち上げたら、数回カウントする(回数はご自身のペースで)

※ポイント:この時、肩は下げて首をのばしていく
※腰を痛めないように注意

【手順3】
◆ゆっくり腰をおろしたら、タオルを外し、足を少し開く(ひざは立てた状態)
◆指をからめて、親指の腹で頭の後ろの「風池(ふうち)のツボ」(※画像参照:髪の生え際にあるくぼみ。循環を促すツボ)を指圧

【手順4】
◆腰をゆっくり持ち上げ、風池のツボに体重をかける(風池のツボにこだわらず、こっている所に指をあててもよい)
◆数回カウントする(回数はご自身のペースで)

※この時、肩と首はリラックスしましょう

【手順5】
◆ゆっくり腰をおろす

時間に余裕のある時は、書籍『すぐできる自力整体』で紹介している「驚くほどほぐれる4つのコース」(動画つき)も、水毒解消に役立ちます。

『すぐできる自力整体』では、この他にも、整体プロの技法を使って、コリや痛み、ゆがみを解消するワークを多数掲載しています(★35分の動画も収録)。

【整体のプロが伝授】「水毒」は不調のはじまり? 余分な水を流す「たった一つの習慣」矢上 真理恵(やがみ・まりえ)写真左
矢上予防医学研究所ディレクター
1984年、兵庫県生まれ。高校卒業後単身渡米、芸術大学プラット・インスティテュートで衣装デザインを学び、ニューヨークにて独立。成功を夢見みて、徹夜は当たり前、寝るのはソファの上といった多忙な生活を続けた結果、心身のバランスをくずし動けなくなる。そのとき、父・矢上裕が考案し約1万5000名が実践している「自力整体」を本格的に学び、心身の健康を取り戻し、その魅力を再発見。その後、自力整体ナビゲーターとして、カナダ、ヨーロッパ各地、イスラエルにて、クラスとワークショップを開催。さらに英国の名門セントラル・セント・マーチンズ大学院で「身体」をより体系的に学び、2019年に帰国。現在、国内外の人たちに自力整体を伝えながら、女性のための予防医学をライフワークにしている。著書に、『すごい自力整体』(ダイヤモンド社)がある。

監修者:矢上 裕(やがみ・ゆう)写真右
矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家
1953年、鹿児島県生まれ。関西学院大学在学中の2年生のとき、予防医学の重要性に目覚め、東洋医学を学ぶため大学を中退。鍼灸師・整体治療家として活躍するかたわら、効果の高い施術を自分でできるように研究・改良を重ね「自力整体」を完成。兵庫県西宮市で教室を開講、書籍の出版やメディア出演などで注目され、全国から不調を抱える人々が続々と訪れるようになる。現在約500名の指導者のもと、約1万5000名が学んでいる。著書に『自力整体の真髄』『はじめての自力整体』(ともに新星出版社)など多数。遠隔地の人のために、オンライン授業と通信教育もおこなう。 写真/榊智朗