デザインスクール事業を立ち上げる!
協会の収益力を高め、広く社会にデザインを発信する存在に
――デザインスクール事業というのはどのようなものでしょうか。
JIDAには五つの地域ブロックがあり、これまで多種多様なセミナーを開催してきました。これらをそれぞれの一過性の活動で終わらせるのはもったいないので、アーカイブを「デザインスクール」として体系化し、コンテンツの視聴を有料化することによって収益事業にしようという試みです。
内容としては、スケッチ技法、表面処理技術、生産加工技術、3D技法、プロトタイピング技術などの技術知識から、契約、知財、リージョナルデザイン、エコデザイン、サステナブルデザイン、インクルーシブデザイン、デザイン思考法、デザイン関連団体の取り組みといった領域まで幅広いテーマを扱います。公益性を意識するあまり、会員のボランティア的な活動に依存しがちですが、持続性を高めるためにも、コンテンツ作成に関わった会員に適切な対価を払っていくつもりです。
――デザイナーのスキルアップをサポートするようなコンテンツですか。
それもありますが、対象はもっと広くて、企業の経営者やビジネスパーソン向けのコンテンツも充実させる予定です。デザインを活用して商品やサービスを開発する側にこそ「広義のデザインとは何か」を明確に示して、デザイナーと同じ言語で語れる状況をつくりたいですから。その先に、社会全体がデザインという概念を共有できる姿を思い描いています。
――「広義のデザイン」は、まだまだビジネス側に理解されていないという認識でしょうか。
理解される前に広がり過ぎたという面はあります。グッドデザイン賞の近年の受賞作を見ても、パッと見て単純に「美しい!」と感じられるものばかりではない。グッドデザイン賞がモノだけでなくコトのデザインを積極的に評価してきたことには大きな意義がありますが、同時に、なぜ評価されているかという理屈を見せていくことも重要です。そういった社会的な啓蒙活動によって、初めて「デザイン経営」の本質が事例をもって理解されるようになると思うのです。
とはいえ、具体的な取り組みはこれからです。各委員会が取り組むべき新しいアイデアをどんどん出したいので、今、「理事会のたびにワークショップをやりましょう」って提案しているんですよ。
――理事会でワークショップですか。
私はこれまで100回を超えるワークショップをやってきましたから、参加者全員が腹落ちできる状態に持っていくことについては自信があります。それに、みんなでソリューションを共創すれば反対者がいなくなるんじゃないか、という狙いもあります。どんな組織でも、一方的に物事を進めてしまうと、反対者や傍観者が出てきます。そうじゃなく、誰もが当事者の「仲良しチーム」でいたい。そのためには「知らないところで何かが決まる」状況をなくすことが大事だと思っています。