診断ツール、スキル教育、相談窓口など多種多様のサポート
――アナログ業務の多い企業では、デジタル化する業務を検討することからスタートすると思います。また、導入に当たっては、デジタル人材の育成、社内の環境や体制を整えることも必要でしょう。さらに、ソフト選定はかなり難しいかと思います。こうしたことについては、どのようなサポートがありますか。
まず、デジタル化を始める前の「気づき」「現状分析」を行ってもらうためのツールとして、「IT戦略ナビwith」という自己診断ツールが用意されています(図3参照)。
これは、自社のITの取り組みが同業種・同エリアの他社と比較してどうかという現状を知る「同業他社比較マップ」を作成でき、さらに、どのようにITを活用すればビジネスが成功するのかというストーリーを知る「IT戦略マップ」を作成することができます。
課題設定をサポートするものとして、中小企業向けの支援策のポータルサイト「ミラサポplus」では、IT導入補助金をはじめとしたさまざまな支援策や、導入事例を掲載しています。
「DXセレクション」は、IT導入よりも一歩進んだDXを達成した事例を選定し、公表しています。同じ業種、同程度の規模の会社のデジタル化の事例を知ることで、自社に必要なデジタル化が見えてくるのではないでしょうか。
導入の意思を固めた企業を支援する施策として、デジタル人材を育成するためのプログラムも提供しています。「マナビDX」「マナビDXクエスト」ではオンラインで学べる無料または有料のさまざまな教育プログラムが用意されています。
――相談できる窓口などはありますか。
代表的な相談窓口は二つあります。最初の相談先として推奨されるのは、国が全国の都道府県に設置している無料の経営相談所である「よろず支援拠点」です。対面相談、オンライン相談が可能です。ここではデジタル化に限らず、「経営戦略の見直し」「人材育成」「財務改善」など、企業が抱える多様な課題に対応しており、デジタル化を含む中長期の改善計画を一緒に立てていく支援体制が整っています。その上で、自社の課題に適したITツールの診断、ベンダー選定へとステップを踏んでいくという形が良いでしょう。
ある程度IT導入の意思が固まった場合に相談窓口となるのが「IT経営サポートセンター」です。ITの実務経験を有するITコーディネーターや中小企業診断士が、オンラインで相談に乗ってくれます。無料で、回数制限もありません。さらに状況によっては、相談員が企業の現場を訪問して現状を把握し、最適なデジタル化のアドバイスをするといったことも行っています。
――最後に、中堅・中小企業・小規模事業者の経営者に向けてアドバイスはありますか。
会社のノウハウや情報は全て自分の頭の中に入っていて、経営はほぼ自分1人でやっているという経営者の方も多くいらっしゃると思っています。そうした会社こそデジタル化は経営者が主導して行わなければ実現できません。デジタルツールを入れるということは、仕事のやり方そのものを変えなければなりません。そこではどうしても苦労を伴うわけですが、そのハードルを越えられるかどうかが鍵になります。
デジタル化は、経営者自身が課題を見つめ、変革への意思を持つことが第一歩です。デジタル化は、経営の在り方を変えるツールであり、目的ではないという視点を持ちながら、支援策を賢く活用し、自社の成長につなげていただきたいと思います。
中小企業庁IT導入補助金担当者インタビュー(前編)はこちら