三菱商事&ベイン出身サーチャーをGENDAの欧州CEOに抜擢、短期間で企業価値が上昇した秘訣とは写真はイメージです Photo:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

アミューズメント業界の供給網の課題に着眼

 第4回では、当社が支援するサーチャーである大富涼氏(写真)による、アレスカンパニー(卸売業、千葉・松戸市)への投資事例を紹介する。当社がこの事案に対して投資判断した背景には、大富氏の経営者としての潜在性を高く評価したことがある。具体的には、(1)現場対応力の高さ、(2)能動的な姿勢、(3)分析と意思決定のバランス、の3点だ。こうした点から、大富氏は短期間で適切な承継企業を見つけ出し経営者として成功を収める可能性が高いと判断した。

 当社と大富氏は、まずサーチ活動として紹介案件を検討しつつ、M&A仲介会社やファイナンシャルアドバイザーにコンタクトを取り、情報収集に努めた。今の日本がグローバルで戦える領域を念頭に、日本の強みである食文化や観光、エンターテインメント(アニメなどのサブカルチャー)に関連する企業をターゲットに据えた。

 アレスカンパニーと出会ったのは、サーチ活動を開始して半年ほどたった頃だ。同社は、クレーンゲームなど「プライズ(景品)ゲーム」で使われる景品の企画・卸売りを営んでいる。当社は、プライズゲーム市場の成長性と、業界のサプライチェーンにおける課題に着目した。業界全体として中小企業が多く、業務の効率性や付加価値に改善余地がある構造があった。同社が成長することで業界のメインプレーヤーとなり、マーケット全体の課題を解決できるプラットフォーマーとなり得る可能性に魅力を感じたことから本格的に検討を始め、2022年3月にM&Aの実行に至った。

 アレスカンパニーへのM&Aの実行は、サーチ活動を開始して比較的短期間で実現できた。大富氏自身が、サーチした企業に対して客観的な現状分析にとどまらず、その企業の課題をどう解消し、成長させられるかを前向きかつ建設的に考えたためだ。大富氏の意識が高かったことと決して無縁ではないだろう。