
サンリオを創業し、2020年6月まで同社の社長を務めた辻信太郎(1927年12月7日~)が、2000年9月9日号の「週刊ダイヤモンド」で、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツから1990年代半ばにサンリオのオリジナルキャラクター「ハローキティ」のデジタル化権買収の提案を受けていたことを明かしている。
ハローキティは74年に同社の自社キャラクター第1弾としてデビューし、2024年で50周年を迎えた。76年に米サンノゼに海外ギフトゲート1号店を開店するなど、海外展開も古くから行っているが、海外ブランドとのコラボなどで日本の「KAWAIIカルチャー」の担い手として存在感を高めていくのは、このインタビューがあった2000年代以降といってよい。現在では130の国と地域で、年間約5万種類もの商品が展開されているという。
ゲイツは80年ごろからキティに興味を持ち、94年ごろに提示した買収金額は6000億円だったと辻は明かしている。しかし、「キティはライセンス料だけで、年間に150億円の利益を上げている。金利1%で運用すると仮定すれば、キティの資産価値は1兆5000億円だ。6000億円じゃ、とても売れない。まして、ITの波がさらに広がっていけば、デジタル化権を手放すことは、キャラクターそのものを手放すことに等しい。われわれの資産がゼロになってしまいかねないということだ。とうてい乗れる話ではない」と話している。日本を代表するキャラクターをわずか6000億円で売り払うのは、明らかに割が合わない。
ところで辻は、NHKの2025年前期の連続テレビ小説「あんぱん」で妻夫木聡扮する八木信之介という登場人物のモデルにもなっている。「アンパンマン」の作者であるやなせたかしと辻の関係は古く、サンリオの創業間もない1960年代に、やなせたかしの詩集を出版した縁だという。アンパンマンの出版は1973年で、キティとはほぼ“同い年”だ。日本を代表する両キャラクターがほぼ同時期に、互いに親密な間の2人から生まれているのが興味深い。(文中敬称略)(ダイヤモンド編集部論説委員 深澤 献)
ハローキティは74年に同社の自社キャラクター第1弾としてデビューし、2024年で50周年を迎えた。76年に米サンノゼに海外ギフトゲート1号店を開店するなど、海外展開も古くから行っているが、海外ブランドとのコラボなどで日本の「KAWAIIカルチャー」の担い手として存在感を高めていくのは、このインタビューがあった2000年代以降といってよい。現在では130の国と地域で、年間約5万種類もの商品が展開されているという。
ゲイツは80年ごろからキティに興味を持ち、94年ごろに提示した買収金額は6000億円だったと辻は明かしている。しかし、「キティはライセンス料だけで、年間に150億円の利益を上げている。金利1%で運用すると仮定すれば、キティの資産価値は1兆5000億円だ。6000億円じゃ、とても売れない。まして、ITの波がさらに広がっていけば、デジタル化権を手放すことは、キャラクターそのものを手放すことに等しい。われわれの資産がゼロになってしまいかねないということだ。とうてい乗れる話ではない」と話している。日本を代表するキャラクターをわずか6000億円で売り払うのは、明らかに割が合わない。
ところで辻は、NHKの2025年前期の連続テレビ小説「あんぱん」で妻夫木聡扮する八木信之介という登場人物のモデルにもなっている。「アンパンマン」の作者であるやなせたかしと辻の関係は古く、サンリオの創業間もない1960年代に、やなせたかしの詩集を出版した縁だという。アンパンマンの出版は1973年で、キティとはほぼ“同い年”だ。日本を代表する両キャラクターがほぼ同時期に、互いに親密な間の2人から生まれているのが興味深い。(文中敬称略)(ダイヤモンド編集部論説委員 深澤 献)
キティのデジタル化権を
6000億円で売ってほしい

ビル・ゲイツがキティを欲しがっていると最初に聞いたのは、もう20年ほど前のことだ。
米サンフランシスコにあったサンリオ・ショップに、米国人の若い男が毎日やって来ては、山のように買い物をしていくという。どうしましょうか、と現地の社員が聞くから、そんなに好きなら、自宅まで商品を届けてやれ、と指示した。
男の名前はビル・ゲイツだという。キティに興味を持った理由を聞いてみると、「いずれキャラクターの時代が来る」と言ったらしい。「コンピューターは個人が使うものになり、そこではキティのようなキャラクターが重要になってくる」ということだった。