家康に学ぶ「安心できるリーダー像」

関ヶ原の戦いで家康が選ばれた背景には、単なる実力や経済力だけでなく、「この人に任せておけば安心できる」という“心理的な安全”がありました。

現代のビジネスにおいても、社員がリーダーに求めるのは圧倒的なカリスマよりも、「この人についていけば、自分も組織も安心してやっていける」という信頼です。

ビジョンを語る力に加えて、周囲が安心して判断を委ねられるような「安定感」を備えることが、リーダーにとって欠かせない資質といえるでしょう。

石高=評価の仕組みを整えた家康

戦国時代の大名たちは、戦の功績によって「石高(収入)」が増減するという明快なルールの中で動いていました。

家康はそのルールをうまく使い、味方した大名たちにきちんと報いることで、組織としての忠誠を高めていったのです。

これは現代の人事制度にも通じます。成果をきちんと評価し、貢献に応じた報酬を与える仕組みがあることで、チームや組織の士気は格段に高まります。

「評価の見える化」は、リーダーとしての信頼を築くうえでも欠かせないポイントです。

「敵をつくらない組織運営」という発想

家康は敵対する勢力を排除するのではなく、取り込んでいくスタンスを取りました。

たとえば、関ヶ原後には旧豊臣方の大名にも所領を安堵するなど、必要以上に恨みを買わないような処遇をしています。

現代のビジネスでも、「勝ち組・負け組」を明確に分けすぎると、不要な軋轢や離反を招くことがあります。

家康のように、“勝った後の配慮”ができるかどうかが、長期的な組織運営では重要になります。

「再び戦国」を防ぐマネジメントとは

家康が目指したのは、「自分が死んでも争いが起きない」持続可能な体制づくりでした。それはすなわち、「属人化を防いだ組織の設計」であり、現代の企業でも求められる視点です。

属人的な営業ノウハウ
一部の人しか知らない情報フロー
トップに依存する意思決定

こうした構造は、「再び戦国」を招きかねません。誰が抜けても組織が円滑にまわる体制を整えることは、現代のマネジメントにおいても不可欠な視点です。

家康に学ぶビジネスの本質

徳川家康の勝利は、力だけではなく「安心」「公平」「持続性」といった、現代のビジネスに通じる普遍的な価値を体現していたことによるものです。

短期的な勝ちにこだわるのではなく、長期的に選ばれ続ける存在になる――それが、家康が教えてくれる本当の「勝ち方」なのかもしれません。

※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。