人生100年時代は、健康こそ最大の資産です。
しかし40歳を越えると、がん、糖尿病、腎臓病といった病気を避けては通れません。国立がん研究センターによれば、40~49歳のがん患者数は、30~39歳と比べると3倍以上です(2018年)。もちろん50代、60代と年齢を重ねるにつれ、がん患者数はどんどん増えていきます。
本連載は、毎日の食事から、大病を患ったあとのリハビリまで、病気の「予防」「早期発見」「再発予防」を学ぶものです。著者は、産業医×内科医の森勇磨氏。「予防医学ch/医師監修」の管理人でもあり、動画は「わかりやすい説明で参考になる」「怖いけど面白い」と評判で、チャンネル登録者は27万人を超えています。初の単著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を出版し、感染症医・神戸大学教授の岩田健太郎氏が「安心して読める健康の教科書」と推薦文を寄せています。

【昭和生まれ注意】風疹ワクチンを打ったほうがいい「意外な理由」Photo: Adobe Stock

昭和生まれ必読! 風疹の怖い話

 2012年から2013年に風疹が大流行しました。風疹とは、風邪や新型コロナと同じウイルスの感染症です。罹患した際は「発熱」「顔から手足にかけて赤いぶつぶつが出現」「首のリンパ節が腫れる」などの症状が出ます。

 ですが、風疹の最も恐ろしいポイントはそういった症状ではありません。むしろ症状自体は軽症でおさまることが多いのです。

胎児に悪影響がある!

 ではなぜ話題に上り、注意喚起される機会が多いのか。それは「妊婦が感染すると高確率で胎児に心臓の奇形や難聴、白内障といった後遺症を引き起こす」からです。これを「先天性風疹症候群(CRS)」と呼びます。

 恐ろしいことにCRSは、妊娠しているかわからない「妊娠初期」に感染すると、後遺症が出る確率が高まります。妊娠4週以内に感染すると、なんと50%以上の確率で胎児にCRSが起こるといわれています。

 2013年の大流行の際もそうだったのですが、風疹は「ある世代」を中心に感染が広がる傾向にあります。

 それは「昭和生まれ世代」です。これは昭和の環境がどうとか、食べていたものが違うといった話ではなくて、明確な理由があります。

昭和生まれはワクチン接種できなかった?

 現代では、風疹ワクチンは「MRワクチン(麻疹風疹ワクチン)」という名称で、基本的に幼少期に「定期接種」されます。

 しかし、この風疹の定期接種が本格的になったのは「平成生まれ」の世代からです。昭和生まれ(正確には昭和62年10月1日以前に生まれた人)は定期接種の機会がなかった、もしくは接種率の低かった世代になります。

 そのため、風疹の流行時も昭和生まれの世代でワクチン接種を受けていない人々は次々と罹患していきました。

 風疹は「昭和生まれ世代」が最も警戒しなければならない感染症なのです。そしておそらく、多くの人にとって「小さいとき風疹にかかった」「風疹ワクチンを打った」という記憶はないはずです。

 もし打っていたとしても、2回打つことで副作用が出るといった事例は報告されていません。「記憶がない、わからない」のであればぜひ打ってもらいたいワクチンといえます。

 次の風疹の大流行がいつ起こるかわかりません。早め早めに手を打っていきましょう。昭和生まれ世代に風疹の抗体検査・ワクチンの無料クーポン券を配布している自治体があります。詳しくはお住まいの自治体にお尋ねください。

 小さな命を守るためにも、自分の身を守るためにも、そして何より風疹を撲滅するためにも、ぜひ風疹ワクチンを打っておきましょう。

(本原稿は、森勇磨著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を編集・抜粋したものです)