この夏、第二弾が発売され、さらなる人気を博している『わけあって絶滅しました。』シリーズ。ユーモアな語り口が特徴の図鑑でありながら、「なぜ絶滅が起きるのか?」という深い問いも込められており、子どもから大人まですべての世代の心を掴んでいる。そこで、著者の丸山貴史さんが、本では語り切れなかった話とともに、お勧めの昆虫について解説する全3回の特別企画をスタート。最終回となる今回は、『続 わけあって絶滅しました。』で、“繁栄”した生き物として紹介されている「カ」についてお届けする。本連載を読んでから本を読めば、絶滅動物の面白さが倍増するはずだ。

意外と知らない「カ」の生態

 良くも悪くも夏の風物詩といえるカ。

 カは私たちにとっては身近すぎる昆虫ですが、知っているようで知らないことがいっぱい。今回は、そんなカの真実をいろいろお話ししたいと思います。

夏の風物詩「カ」。 日本人にも馴染み深い夏の生き物だ

人の血を吸うのは、ほんの一部

 まずカの種類ですが、どれくらいいると思いますか? なんと世界に3500種、日本だけでも112種がいると言われています。これだけ種類の多いカですが、全てが人間から吸血するわけではありません。日本で人間を刺すのはアカイエカやヒトスジシマカなど10種ほどで、まったく人間を襲わないカのほうが多いんです。

 ちなみに、カがマラリアやデング熱、日本脳炎などの病気を媒介することがありますが、日本でカに刺されたら「マラリアになる!」などと焦らなくても大丈夫。これらの病気は、カが作り出すわけではなく、病気を持った人の血を吸ったカが、次の人間の血を吸うときに移すんです。病気が流行していない地域では、カに刺されても病気になる可能性はほとんどありません。

血を吸うのはメスだけ

 意外と知られていない真実として、「血を吸うのはメスだけ」というものがあります。すべてのカのオスは血を吸いませんし、オオカの仲間に至ってはメスも吸血しません。さらに、カは主食として毎日血を吸っていると思われがちですが、それは誤解です!

 カの食べ物は花の蜜や果物の汁。実は、カは血を吸わなくても天寿を全うすることができるのです。じゃあなぜ血を吸うのかというと、それは繁殖のため。カのメスは、卵を大きくする栄養を得るために血を吸っています。メスが交尾をするのは一生にたったの1回、産卵も4~5回です。だから、血を吸うのも一生に4~5回のみで、同じカが一晩に何度も吸血することはありません

 わたしたちがバチンと叩いているカは、卵を生むため決死の覚悟で血を吸いに来たカなのです。

人間を利用して繁栄した

そんなカが地球上に登場したのは、昆虫の歴史の中では比較的新しく、中生代のジュラ紀のことだと考えられています。かれらの進化は、吸血対象となる哺乳類や鳥類の出現とともにあったのでしょう。そして、中生代が終わり新生代になると、哺乳類や鳥類が地上を席巻したため、血が吸い放題になったカも大繁栄を遂げているわけです。

 そのため、人間の血を好んで吸うカは、私たちが繁栄すればするほど、繁栄するのです。私たちは図らずも、敵を利していると言えるかもしれません。

カに刺されないテクニック

 カに刺されたくない人のために、最近流行りの防御法をお伝えします。それは、「足首から下をアルコールで消毒する」という方法。足の裏には様々な常在菌が生息していますが、菌の種類が多いとカに刺されやすいという因果関係があるのです。

 なぜ菌の種類が多いとカに刺されやすいのか、その理由はまだ分かっていませんが、カに悩まされている人は、試してみてはいかがでしょうか? ちなみに、効果が持続するのは数時間程度だそうです。

 いろいろなカの真実をお届けしましたが、いくつ知っていましたか? わけあって絶滅した動物ではなく、今回のようにわけあって“繁栄”した生き物についても考えてみると、絶滅と進化の秘密が見えてくるかもしれません。