同胞同士の「助け合い」から「搾取」へ

 特に日本語が通じない、日本の制度を理解しないまま移住する新規渡航者は、先に日本に来た先輩同胞の世話になることになる。本来なら、中国人同士で助け合うことが期待されるが、現実は真逆の場合が多い。

 中国人同士の間で軋轢(あつれき)が生じたり、互いに騙しあったり、嫉妬や対立などのトラブルが多発している。「助け合い」ではなく「食い物にする」関係となっているのである。そこで“情報格差”を武器に、同胞に法外な料金や詐欺まがいの仲介料をふっかけるケースが後を絶たない。

 先日、関西地方で筆者が参加した複数の会合での雑談では、経営・管理ビザで来日した中国人たちが、自身や知人の体験を語った。その中で特に印象深かったのが「中国人が中国人を騙す」ケースだった。

 たとえば、移住後にまず直面するのは「住まいの確保」である。「経営・管理ビザ」の条件には、日本国内に事務所と住居を設けることが含まれる。ところが、日本語もわからず、日本の不動産の商慣行も分からない移住者にとってはハードルが高い。それを“同胞”である在日中国人が逆手に取って仲介するのだ。

「日本での生活を全面的にサポート」「子どもの学校手続きを代行」――こうした甘い言葉を信じて来日した移住者は、契約書に隠された高額な手数料や二重請求に直面する。仲介業者の中には、実際の敷金・礼金の額を数倍に水増しし、差額を懐(ふところ)に入れる者もいる。日本語が理解できず、何が不当かを把握できない移住者は、指示されるままに金を払い続けるしかない。

不動産市場での騙し合い

 日本の不動産市場は、都市部であっても中国の上海や北京のような大都市に比べて格安である。加えて、中国では個人による土地の所有が認められていないのに対し、日本では土地所有が認められることも、中国人にとっては魅力的だ。こうした背景から、中国人の間で日本の「不動産爆買い」が加速している。

 問題は、その仲介を担うのもまた中国人だということだ。ある中国人男性が紹介した事例では、知人が賃貸ビル一棟を購入した際、仲介業者が実際の空室率を隠蔽(いんぺい)。一時的に物件に仲間を住まわせ、満室を装ったうえで、偽の賃貸契約書まで作成して高収益性を偽装した。高利回りを信じて契約したものの、購入後に大量の空室が発覚。すでに手遅れだった。このような“仕掛け”は珍しくない。

 中には「事故物件」、いわゆる「訳あり物件」(中国では「凶宅」といい、極めて忌避される)を隠して売却する例や、大規模修繕費がもうすぐ必要になることを告げずに物件を売るケースもある。SNS経由で不動産会社を紹介された中国人留学生が数百万円を騙し取られた事例では、会社の住所すら架空だった。

 このように同胞を利用し、同胞を騙すビジネスモデルが常態化しているのだ。