「傾聴」は「同意」ではない
本音で話せる場を支えるのが「傾聴的態度」です。
たとえば、「最後まで話を聞いてくれる」「親身になってくれる」「相槌やうなずきがある」――。そんな基本的なやりとりの中に、部下は「この人なら話せる」という安心を見出します。
本間浩輔氏の新刊『増補改訂版 ヤフーの1on1』では、傾聴について「ただ黙って相手の話を聞く」のではなく、うなずいたり、相槌を打ったり、相手が発したキーワードを繰り返したりして積極的に聞く「アクティブリスニング」に近い内容であることが説明されています。
ここで注意すべきは、「傾聴」と「同意」を勘違いしてしまうケースです。
たとえば部下が「最近忙しい」という悩みを相談してくれたとします。「そうだよね、忙しいもんね」と同意してしまうのは一見親切そうでも、「聞いているふり」と感じられることがある。本当に大事なのは、「そうなんだね」「大変だったね」と気持ちに寄り添うことだと思います。
さらに言えば、「相手の話を遮らずに待つこと」も大事です。マネジャーは、つい自分のアドバイスや意見を挟みたくなるものです。でも、部下が本当に求めているのは、「聞いてくれる人」であり、「味方になってくれる人」です。
研修などで私がよく紹介するのは、『リーダーのための心理的安全性ハンドブック』(青島未佳・著・山口裕幸・監修、2021年、労務行政刊)にある「親しみやすいリーダーのチェックリスト」です。
以下の表は私が一部修正したものです。そこには「話を聞く姿勢を取っている」「相手の話を最後まで聞いている」「先入観を持たずに話を聞いている」など、基本的だけれど深い項目が並びます。これらはすべて、傾聴の構成要素です。

傾聴とは単なるテクニックではありません。相手としっかり向き合い、その言葉を聞くこと。その態度があれば、人は自ずといろいろなことを話してくれるでしょう。