食後には、インスリン刺激によって血糖が取り込まれます。そして、血中のインスリン濃度が低くなっている運動中には、筋収縮そのものによって、血糖が取り込まれます。

 食後に上昇した血糖値の低下や、運動に必要なエネルギー源である血糖を筋肉内に速やかに取り込むためには、GLUT4の筋肉内の量が多いこと、そしてGLUT4が円滑に筋細胞膜上に移行できることが重要なのです。

1年間の運動で血糖値が
正常レベルにまで低下

 東京ガスで行われた定期健康診断の受診者を対象とした長期観察研究によれば、心肺体力が低い人々ほど糖尿病の発症率が高くなっていることが、澤田亨博士(編集部注/現・早稲田大学スポーツ科学学術院教授)によって報告されています。

 私の師であるホロツィー博士(編集部注/ジョン・ホロツィー。運動生化学のパイオニア)らの研究では、2型糖尿病患者に1年間の持久性トレーニングを実施し、その前後で経口糖負荷テスト(Oral Glucose Tolerance Test:OGTT)を行っています。図4-18はその結果を示しており、図中の上段が血糖値の変化で、下段が血中インスリン濃度の変化です。

図表3:糖尿病患者に対する1年間の運動トレーニングの効果同書より転載
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 よく知られているように、2型糖尿病患者は安静空腹時の血糖値が高くなっていますが、1年間のトレーニングによって、正常レベルにまで低下しています。そして、糖負荷後30分、60分、120分、180分の血糖値も、トレーニング前にくらべて非常に低いレベルで推移しています。

 また、血中インスリンは、トレーニング前には、糖負荷後に急激に上昇し、かなり高いレベルが続いていますが、トレーニング後には、その上昇は抑制されており、インスリンの感受性が高まったことがわかります。

 このように、運動トレーニングの糖代謝機能の改善効果は明確です。