肥満や糖尿病の解消に逆効果も…健康な人は知っている、運動が「効く時間帯」と「効かない時間帯」写真はイメージです Photo:PIXTA

運動は“万病への妙薬”とも言われ、糖尿病改善、認知症予防、抑うつ気分軽減など健康改善にオールマイティな効用をもたらす。その効果をさらに高めたいなら、「いつするか」に気を配りたいもの。肥満や高血圧など、自らの健康課題に合わせ、適切な時間帯で運動することがポイントだ。まずは、取り組みやすく効果的なウォーキングから始めてみてはいかがだろうか?※本稿は、大塚邦明『時間治療 病気になりやすい時間、病気を治しやすい時間』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。

“万病への妙薬”である運動
その効果を最大化する時間帯とは?

 古代ギリシアの医学の祖と称されるヒポクラテスは、「運動とは万病への妙薬である」と教えました。この考えは現在も受け入れられており、たとえば英語には「exercise is medicine」という表現があります。

 運動には、筋肉をしなやかにして骨質を改善し、また骨量を増やす効果もあります。血圧を下げて肥満を抑制し、糖尿病の改善にも役立つ一方、炎症を抑えて免疫力を賦活し、腹部大動脈瘤を縮小させる効果を発揮することもあります。自律神経を整え、筋肉から複数の生理活性作用をもった物質を分泌して抑うつ気分を取り払い、もの忘れを改善して認知症を予防します。運動の効用はオールマイティで、まさに万病への妙薬であるといえるでしょう。

図表1:運動は万病への妙薬図4.4 運動は万病への妙薬 同書より転載
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 時間治療との関連における最近のトピックとして、「筋肉時計」の発見があります。筋肉時計のはたらきいかんで、運動の効用には、「よく効く時間」と「効かない時間」があることがわかってきました。運動効果は全身に影響し、筋肉だけでなく心臓や肝臓、脳や腸にもはたらきかけて病気を治し、疲労や病気からの回復力を高めて健康寿命を延ばしてくれます。

“ほどほどの運動”が
健康に一番よい理由

 近年の分子生物学の進歩によって健康医学が急速に発展し、運動学にもパラダイムシフトをもたらしました。強すぎない程度の“ほどほどの運動”が有効とされ、たとえば歩行や軽いランニングには脳の海馬や前頭葉、扁桃核などに影響して自律神経ネットワークを活性化し、記憶力を高めて脳の老化を防ぎ、抑うつ気分を軽減して不安や心配がなくなっていくことが確認されています。

 ほどほどの運動がよい理由の1つは、筋肉が刺激されることで、筋肉から「マイオカイン」とよばれる生理活性物質が分泌されるからです。