糖尿病予防効果があるのは
持久性トレーニング

 2型糖尿病患者には肥満、とくに内臓脂肪型肥満の人が多いですが、内臓脂肪の過剰な蓄積は、アディポサイトカイン(編集部注/脂肪細胞から分泌される生理活性物質の総称)であるレジスチンやTNFαの分泌上昇によりインスリン抵抗性の亢進(こうしん)を引き起こします。

 さらに、肥満による異所性脂肪(筋肉細胞内脂肪)の過剰な蓄積も、インスリン抵抗性を招くひとつの要因であることが明らかになっています。

 国立健康・栄養研究所に在職中、名古屋大学の佐藤祐造教授のグループと共同して行った研究をご紹介しましょう。

 若年成人は運動習慣のない人々と持久性トレーニングを積んでいる長距離ランナーの2グループに、そして高齢者は、とくに運動習慣のない人々、安静臥床(いわゆる寝たきり)を強いられている人々、そして持久性ランニングの運動習慣がある人々の3グループに分け、糖代謝機能を比較検討しました。

 図4-19から、若年成人でも、高齢者でも、持久性トレーニングは糖取り込み能を高めることがわかります。

図表4:若年者と高齢者のインスリン感受性におよぼす運動トレーニングの影響同書より転載
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 血液中のブドウ糖(血糖)は、インスリン刺激により、主として骨格筋に取り込まれますので、骨格筋の糖取り込み機能が高いことが重要です。それに対して、安静臥床を強いられている高齢者は、非常に低い糖取り込み能であることがわかります。

 それは、日常的な筋肉運動が極端に低下しているためであると考えられます。さらに、重要なことは、高齢者でもよくからだを動かしていると、糖代謝機能は運動習慣のない若年者とほぼ同レベルに維持されているということです。

週3回以上のトレーニングで
2型糖尿病の発症が40%も低下

 次に、筋トレと有酸素運動を組み合わせた30分間のサーキット・トレーニングが、糖尿病予防に有効であるかどうかを、女性のみを対象としたフィットネスクラブ会員で検証した澤田亨博士らの調査研究を紹介します。