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「デジタル化された行政手続きに満足している」――2022年12月の調査でこう答えた東京都民は、わずか26%。一方で、ニューヨークやロンドン、パリ、シンガポール、ソウルでは、満足の割合が66%に達する。40ポイントもの差は、一体なぜ生まれているのか。都庁や都内62区市町村のDXを推進する「GovTech東京」に、行政サービスの使いにくさ解消に向けた取り組みと成果を聞いた。(ノンフィクションライター 酒井真弓)
行政のデジタルサービスが使いにくい、三つの理由
東京都は、デジタル技術で都民サービスを向上させる「スマート東京」を掲げている。しかし、2022年12月の調査では、行政のデジタルサービスへの都民の満足度は26%と、海外主要都市の66%を大きく下回る。
「行政のアプリやWebサービスで、『これ最高』って、なかなかないじゃないですか」。そう話すのは、GovTech東京で経営管理本部長を務める辻正隆さんだ。

行政サービスの満足度が低い背景には、3つの構造的な課題がある。第1に、デジタル人材の決定的な不足だ。「道路や水道の整備なら、都庁の技術職員が工事事業者と対等に渡り合える知識を持っています。でも、デジタルサービスにおいては『とりあえず、いいものを作ってください』とお願いするしかない」と辻さん。結果として、発注者側が適切に関与できないままサービスが開発され、見た目や使い勝手に関してもプロ目線で定量的に評価できない状況が続いてきた。