リーダーに求められる3つの言語化
では、リーダーは何を言語化すればいいのでしょうか? トップの頭の中を言語化(明確化)するために、リーダーには3つのタスクが求められます。
1. 共通言語としての「型」を教える
組織内で共通の思考の型を持つことが重要です。特にビジネスで最も重要な「価値」と「差別化」の型をリーダーに身につけてもらいましょう。
まず「価値」です。
商品サービスや、そのタスクの価値とは何ですか? と聞かれて明確に答えられることは多くないです。つまり、自分でも「自社の価値」を明確に捉えていないのです。
素材や技術力を「価値」と捉えるケースもありますが、それらは自社が売り込みたいポイントであって、顧客にとっての価値ではありません(顧客は技術力の高さにお金を払うのではなく、その技術で何かができるからお金を払うのです)。
ここで価値を言語化する型をお伝えします。
価値にもいくつか種類がありますが、まずは「変化」に着目することが重要です。
ライザップ社のCMを思い出してください。相手に変化(ビフォー・アフター)を明示したからこそ、後発にもかかわらずものすごいスピードで規模を拡大していきました。
自社が持っているものを「それを使って顧客に提供できる変化(Aだった人がBになる)」に置き換えてみましょう。
そして次は「差別化」です。他社との差別化は、すべての経営者が考え、悩んでいるポイントかもしれません。しかし差別化もまた正しく言語化されていない概念です。
一般的に「差別化=他社との違い」と認識されています。ですが、仮に看板の色を変えても差別化戦略とは言えませんね。社屋の住所が他社と違うのは「違い」ではありますが、差別化戦略ではありません。
では差別化とは何か? です。
差別化とは、「○○を実現させようとしたときに、既存商品ではできない、うちの商品ならできる」を顧客に伝えることです。
単に新しい機能を付けることが差別化ではなく、「顧客が他社商品を使ってもできなかったことを、うちならできる」と伝えることが差別化なのです。
そのポイントを出すことは簡単ではないでしょう。しかしそこに目を向けなければ「他のと一緒。いらない機能がついているだけ」と思われてしまうのです。
2. 「中ボス」を言語化する
経営トップが掲げるゴールやビジョンを、現場で今日から手を付けられるレベルに小分けしなければいけません。具体的に次の手順で考えてみましょう。
ステップ1:最終ゴールを要素分解する
まず、トップが示した抽象的なゴールを構成要素に分解します。たとえば「ブランディング強化」であれば、「知名度向上」「差別化の確立」「価格競争力の脱却」「顧客ロイヤルティの向上」などの要素に分けられます。
ステップ2:各要素の達成条件を明確化する
分解した各要素について、「何が実現できれば達成したと言えるか」を具体的に定義します。定義は「必要条件を挙げること」でした。絶対の正解はなく、あくまで自分が考える必要条件を考えてみましょう。知名度向上なら「30代・40代のOLのうち、半数が知っている状態」、価格競争力の脱却なら「ライバル商品より20%高くても選ばれる状態」かもしれませんね。
ステップ3:優先順位と時系列を整理する
すべての要素を同時に達成することは困難なため、どの順番で取り組むかを決めます。通常は、基盤となる要素(知名度など)から着手し、段階的に高次の要素(ロイヤルティなど)へと進みます。この順序立てにより、メンバーは「今、何に集中すべきか」が明確になり、効率的にゴールに向かって進むことができるのです。
3.型に基づいてメンバーに問いかける
ほとんどの場面で、トップが現場に期待し指示をするのは「価値」「差別化」を顧客に伝えることです。
まずは、メンバーがこれらのキーワードを理解することが重要なわけです。そのために、リーダーはメンバーに対して常に型に基づいて問いかけをしていきましょう。