会社やチームのリーダーとして、いま、求められているリーダーとはなんだろうか? 責任をとること? 部下やメンバーの話をよく聞いて、仲を深めること?
『リーダーの言語化 「あいまいな思考」を「伝わる言葉」にする方法』の著者である木暮太一氏は、リーダーの本来の役割は、どこに向かって進むべきかを「言葉で明確に伝えること」だと話す。本記事では、木暮氏に「言語化」について教えてもらう。

「そりゃ動けないわ…」現場がフリーズする“リーダーの一言”Photo: Adobe Stock

「曖昧な指示」が組織を迷わせている

「風通しのいい会社を目指そう」

「顧客第一主義で行こう」

「もっと売上を上げよう」

――多くの組織で、経営陣からこうした方針が示されます。

しかし、現場のメンバーには伝わりませんし、動いているようにも見えません。これは、メンバーのやる気がないからではありません。メンバーが動かないのは、トップの言葉が「具体的に何をすればいいのか分からない」からです。

問題の本質は、メンバーの能力ややる気の低さではなく、トップの頭の中が言語化されていないことにあります。そして、その曖昧な指示を現場で実行可能なアクションに変換できるリーダーが圧倒的に不足していることにあります。

リーダーがトップの言葉を現場に橋渡しできるようになれば、組織はみるみる動き出します。

でもどうすれば?

今回の連載では、トップの頭の中を言語化してメンバーに伝えられるリーダーを育てるために施策を解説します。

なぜトップの言葉は曖昧になるのか?

経営者の多くは、長年の経験と勘によって物事を判断しています。

「なんとなくこの方向が正しい」という感覚は鋭いのですが、それを言葉で説明することは少し苦手です。とうのも、その判断プロセスの多くが無意識化されているからです。

「もっと顧客に寄り添ったサービスを提供しよう」と経営者が語る、本人の頭の中には具体的なイメージがあります。

しかし、そのイメージを正確に言語化して伝えることができません。

結果として、「顧客に寄り添ったサービス」という抽象的な言葉だけが現場に降りてきて、メンバーは何をしていいか分からなくなるのです。

私が以前関わった企業でも、曖昧な指示が飛び交っていました。あるリーダーは「よしなにやっておいて(いい感じにやっておいて)」が口癖で、何をどうすればいいのか全く言わない人でした。

こちらとしては、「現状のものはNG」とだけ認識しますが、何を修正すべきか、どのように修正すべきかがわかりません。

「分かってくれるだろう」という思い込み

多くの経営トップは、「これくらい分かってくれるだろう」と考えがちです。しかし、トップとメンバーでは経験も立場も全く異なります。経営者にとって「当たり前」のことも、メンバーにとっては「意味不明」なのです。

ただし、日々忙しい経営トップが各メンバーにその都度伝えていくのは現実的ではありません。カギを握るのはリーダー層です。

リーダー層が、トップの頭の中を言語化してメンバーに伝えることができれば、チームが一丸となり、進むべき方向に進むことができます。