松屋は吉野家、すき家とひと味違う!?

 機械による注文が標準化されることで、ヒューマンエラーの削減と業務効率の最適化が進み、従業員は接客や清掃といった他の業務に集中できるようになる。調理に注力する環境が整えば、料理の品質が向上し、顧客満足度が上昇するという循環が生まれる。

 また、タブレット注文では多言語対応も可能であるため、インバウンド(訪日観光客)にも対応しやすい。英語や中国語、韓国語などへの対応が標準装備された端末が一部店舗で導入されており、海外からの来店者が増える中で重要性は増している。

 文化や言語の違いを越えて注文の正確性を担保する手段として、タブレットは不可欠な存在となりつつある。

 すき家でも、タブレット注文の普及は急速に進んでいる。チーズやキムチ、高菜明太マヨといったトッピングを自由に組み合わせられる設計が導入されており、若年層の嗜好を反映した仕様となっている。

 店員に遠慮せず注文できることで、より個性的なメニュー構成が可能となり、利用者の満足感を高めている。

 松屋においては、注文端末の導入をさらに一歩進めている。

 券売機形式による食券制を長年採用してきた松屋では、当然ながら注文だけでなく会計処理も完全に無人化されている。入口に設置された大型券売機では、定食や丼もの、トッピング、ドリンクまでを一括選択でき、支払いも現金やICカードで自動化されている。

 従業員との対話を一切必要としない設計は、顧客にとっても店舗にとっても効率的であり、飲食業界における次世代型サービスの先駆けともいえる。

 一方で、松屋のような食券制のセルフオーダーには課題もある。

 テンプル大学の研究『Lined Up?Examining a “Waiting Line” Effect in Technology-Enabled Restaurant Menu Ordering』(2024年)によれば、注文列が長くなると、利用者は「後ろに並ぶ他者の視線」を意識し、急いで注文を済ませようとする傾向が強まる。その結果、新商品をじっくり吟味する時間が失われ、既存の慣れたメニューに流れてしまうという。

 これは顧客体験の質を下げ、店舗側にとっては新商品の訴求機会を逸するリスクにつながる。