人生の転機で何度も読み返したい大切な1冊――アメリカで大きな反響を呼び、多くの人の心を動かした話題作『Master of Change 変わりつづける人』。この本が教えてくれるのは、1つの軸に執着するのではなく、変わり続けることこそが「自分らしい人生」を形づくるという、しなやかで力強い生き方の哲学だ。
人生は変化の連続。それでも、変わることに戸惑い、現状にしがみつこうとするのが人間だ。本書は、変化と安定をバランスよく受け入れ、自分らしい生き方を築いていく方法を教えてくれる。この記事では、本書のエッセンスを紹介する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

マジメな人ほど、目標に執着してしまう
一つのことに執着していると感じたら――そのことばかり考えている時や、身体が緊張している時には、こう自問してほしい。
視野を広げて、目的やターゲットだけでなく、周囲で起きていることにも目を向けると、どう見えるか?
立ち止まって、目的地にたどり着くための別のルートを探すこともできるし、最終目的地だと思っていた場所が、そうではないかもしれないと考えることもできる。
――『Master of Change 変わりつづける人』P.230より
マッキンゼー出身でウェルビーイング研究の第一人者であるスタルバーグは、『Master of Change 変わりつづける人』の中で、私たちの「目標信仰」に鋭く切り込んでいる。
私たちは小さい頃から「目標を決めて努力すること」「ゴールを目指してやり抜くこと」の大切さを教えられてきた。
この価値観は、特に真面目で責任感の強い人ほど深く根づいている。
確かにそれは、成果を出すうえで欠かせないことかもしれないが、その「目標への意識の強さ」がいつの間にか「視野の狭さ」にすり替わってしまうと、スタルバーグは指摘しているのだ。
努力が空回りしてしまう人の共通点
本来、目標に向かって邁進するのは良いことのはずなのに、それに執着した途端、私たちは周囲の変化に気づけなくなってしまう。
これは、一体どういうことなのか?
たとえば――
・もっと良い選択肢があっても、気づかずスルーしてしまう
・状況が変わっても、過去の戦略にこだわってしまう
・撤退すべき案件に、貴重なリソースを注ぎ続けてしまう
これらは、目標への意識が強すぎて、臨機応変に動けなくなってしまう典型例だ。
「頑張っている」行動の中に、非効率や硬直性が潜んでいる。
「努力の空回り」は、多くの場合、目標に縛られていることが原因なのだ。
「やり抜いている」つもりが、「縛られている」だけになっている
責任感が強い人ほど、「途中でやめるのは逃げだ」「一度決めたことを変えるのは敗北だ」と考えてしまう。
これは、「やり抜く=正義」という価値観が、深く染みついているからにほかならない。
目標を疑うなんて、裏切りのように感じるかもしれない。
だが、ビジネス環境も、組織も、自分自身の価値観も、時間とともに変わっていく。
そんな中で、「一度決めた目標」にしがみつき続けることが、かえって足かせになることもある。
ゴールに固執すればするほど、変化への適応力は失われていく。
気がつけば、「やり抜いている」つもりが、「縛られている」だけになっていないだろうか?
臨機応変にゴールを見直そう
多忙な日々のなかでは、「目の前の目標をとにかく達成すること」が最優先になりがちだ。
だが、ふと違和感を覚える瞬間があるなら、それは立ち止まるサインかもしれない。
そんな時、自分に問いかけてみてほしい。
「自分は目標に向かっているのか? それとも目標に縛られているのか?」
本書には、人生の転機で読み返したい言葉が詰まっている。
迷いを整理し、視野を広げ、今の自分にとって本当に必要な選択を見つける手がかりとなる。
迷った時、立ち止まりたい時に、自分を深く見つめ直すための実践的なツールとなる一冊だ。
※本稿は『Master of Change 変わりつづける人』より一部を抜粋・編集して構成しました。