さらに、動物の中でもすべての動物がミルクを出すわけではない。人類が利用してきたミルクには、牛乳の他にヤギ乳、羊乳、ラクダ乳、水牛乳、馬乳、ヤク乳などがある。
ヤギや羊は乾燥地域に強くて、そのミルクはチーズなどに加工して食される。ラクダ乳は砂漠を移動する遊牧民が飲用し、ヨルダンの砂漠で飲ませてもらったら思いの外さっぱりしていてうすい塩味を感じてびっくりした。
水牛乳は脂肪分が多く、インドではギー(精製バター)、イタリアではモッツァレラチーズの中で特に高級なものに加工される。馬乳やヤク乳は、特定の地域で日常の糧になっている。
これらミルクを出す動物の共通点は、哺乳類であることだろうか。そもそも哺乳類という漢字自体が、乳を口に含む(哺)ことを意味するので、乳を作るのは哺乳類の動物だけと考えてよさそうだ。
牛の乳は飲めるのに
クジラの乳が飲めないワケ
しかし、さらに疑問が出てくる。哺乳類が皆乳を出すならば、豚もうさぎも乳を出していいはずだ。それなのに我々は豚乳やうさぎ乳を飲まない。さらに陸上動物だけじゃなく、海にすむクジラやイルカも哺乳類だから、クジラ乳やイルカ乳というのがあってもいいはずだ。なぜないのか。

調べてみると、これら動物もたしかにミルクを出すようだ。しかし豚やうさぎは乳量が少ないので人間が利用するには効率が悪く、クジラやイルカは海を泳いでいるので搾るのが難しいらしい。考えてみれば当たり前だけれど、こんなにいろんな動物のミルクがあるなんて驚いた。
ちなみにクジラ乳は水中で短時間で飲ませなければいけないためか、かなり濃いらしい。
色々考えると、牛乳ってすごいなと思う。1日に1頭から20~30リットルも搾れて、バターにヨーグルトにチーズにと、様々加工できる。人間の搾乳のために動物を改良したり仔牛の飲む分を横取りしていると聞くと、複雑な気持ちになるけれど、感謝して牛の乳をいただきたいものだ。