がんのイメージ写真はイメージです Photo:PIXTA

男女問わず生涯で2人に1人が罹患するといわれている「がん」。たばこや飲酒といった生活習慣ががんの罹患率に影響を与えることはよく知られているが、「遺伝的要因」も無視できない。がんを予防するためにはどのようなことをすればよいのだろうか。※本稿は、坪井貴司、寺田 新『よく聞く健康知識、どうなってるの?』(東京大学出版会)の一部を抜粋・編集したものです。

「がん」ができる
メカニズムとは

 そもそもがんとは、どんなものなのでしょうか?

 がんは、「悪性腫瘍(しゅよう)」とも呼ばれます。私たちの体は、約37兆個の細胞でできています(注1)。

 そして私たちの体には、細胞の数を絶えず37兆個に保ち続ける絶妙なしくみが存在します。このしくみに異常が生じると、細胞が無限に増殖し続けるように変化し、塊(腫瘍)をつくるようになります。

 こうしてできた腫瘍の中には、周囲の組織へと広がり(浸潤)、別の臓器や組織といった離れた場所でも増殖(転移)するものも出てきます。このように変化したものが悪性腫瘍です。

 一方で浸潤や転移をせず、ゆっくりと増える腫瘍のことを良性腫瘍と呼びます。良性腫瘍は、手術で完全に切除できれば、再発することはほとんどありません。

 細胞が増殖するためには、細胞内にあるDNAのアデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)という4つの塩基が約30億個対になって並んだすべての遺伝情報(ゲノムと呼びます)を2倍に複製しなければなりません。

 そしてそれらを2個の細胞へ均等に分配し、遺伝的に同一なものをつくり出すということを繰り返します。このような過程を、細胞周期(cell cycle)と呼びます。

(注1)Bianconi, E. et al., Annals of Human Biology, 40:463-471, 2013.