アンジェリーナ・ジョリーが行った
“がん家系”ならではの対策とは…
アメリカの俳優アンジェリーナ・ジョリー(以下、アンジー)は、母親を乳がんと卵巣がん、叔母を乳がん、祖父を汗腺がん、祖母を卵巣がんで亡くしています。つまり、HBOCの可能性が強く疑われていました。
アンジーは、遺伝子検査を受け、BRCA遺伝子に変異があることがわかりました。そこで予防的措置として両方の乳房の摘出、さらには卵巣と卵管の摘出手術を受けたのです。
もしみなさんがアンジーと同じような状況に置かれたら、遺伝子診断を受けるでしょうか?予防的に手術を受けるでしょうか?
遺伝子診断を受けBRCA遺伝子に変異があった場合は、HBOCであることが確定します。同時に血縁者の方も同じ遺伝子変異を引き継いでいるかどうか調べることが可能になります。
ただし、遺伝子診断を受けて、BRCA遺伝子に変異がなかったからといって、HBOCではないと断定することはできないことにも注意が必要です。というのも、典型的なHBOCの患者さんの場合でも、遺伝子に異常が見つかる割合が70~80パーセントだからです。
そのためHBOCの遺伝子診断のもつ意味や検査結果が本人だけでなく家族にもたらす影響について、専門家や家族とよく話し合うことが大切です。
アンジーの場合、HBOCと診断され、予防的手術を受けました。一方日本の場合、乳がんと診断され、その乳がんが手術で乳房を温存できるほどの大きさ(2センチ)であっても、BRCA遺伝子に変異があることが遺伝子検査で明らかになった場合、乳がんの再発を予防するために乳房の全摘を勧められます。
また、まだ乳がんを発症していない反対側の乳房や卵巣を手術で予防的に切除すること(リスク低減手術と呼ばれる)も勧められます。現在では、リスク低減手術に対して健康保険が適用され、高額療養費制度の対象にもなっています。