「わかっちゃいるけど任せられない…」プレーヤー脱却できない上司が無意識に感じている不安の正体写真はイメージです Photo:PIXTA

現在、多くの中間管理職が自らも手を動かす「プレーイングマネジャー」になっている。マネジメント業もある中、今までと同じようにプレーヤーとして働くことは当然できない。にもかかわらず、そうしようとする、あるいはそこから脱却できないマネジャーが少なくない。脱・プレーイングマネジャーができる人とできない人の違いとは何か。社会背景やマネジャーが抱える課題、プレーイングマネジャーからの脱却方法についてお伝えする。(mento代表取締役、ビジネスコーチ 木村憲仁)

日本企業ではマネジメントが
“必修科目化”している

「日中は会議で埋まっているので、いつも遅くまで残業してしまう」
「自分でやった方が正確で早いから、部下に仕事を任せられない」
「気づいたら1on1が仕事の指示になってしまっている」

 マネジャーである自分自身を振り返ってみて、あるいは周りのマネジャーを見て、同じような状況だと感じることはないでしょうか?

 まさに、世間でよく言われる「プレーイングマネジャー」の状態です。現場仕事を手放すことができず、本来チームや組織の運営に使うべき時間を、自らが手を動かす業務に使ってしまっているのです。

 プレーイングマネジャーは決して珍しいわけではありません。産業能率大学総合研究所の「上場企業の部長に関する実態調査」(2021年)では、96.9%の部長がプレーヤーとマネジャーを兼務していて、プレーヤー業務の比重が4割以上を占めるという結果も出ています。

 プレーイングマネジャーが多い理由には、日本の組織文化も大きく関係していると感じます。

 というのも、日本では「マネジャーはマネジメントのプロフェッショナルである」という認識が薄く、残念ながらマネジメントの専門性が正当に評価されていません。

「プレーヤーとして実績を上げた後は、自動的にマネジメント職へ」というのが、多くの日本企業で昇進するための一般的なキャリアパス。マネジャーになりたいかどうかや適性とは関係なく、あたかもマネジメントが“出世するために通らなければならない必修科目”かのように扱われているのです。