言い訳して出てきた言葉の中にヒントがある

●対人関係の緩衝材になる
 言い訳には、時に自分の非を和らげながらも相手との摩擦を避ける社会的調整機能がある。完全に沈黙するか、あるいは即座に謝罪して深く落ち込むかの二択ではなく、少しずつ相互理解に向かうための“ゆるやかな通過点”として、言い訳は機能する。

 つまり、言い訳は心の安定と再起動のための“心理的バッファ”なのである。それを認めない社会は、失敗から立ち直る余地を人に与えない。

 失敗のあと、思いつくままに言い訳してみよう。「こうだったから」「ああだったから」……。

 それでよい。むしろ、その状態を恐れてはならない。そこで出てきた言葉の中にこそ、自分の価値観、行動の癖、思考の偏り、関係性のズレ、組織構造の問題が凝縮されている。

 言い訳は、単なる言い逃れではなく、「現実との接点における主観的な説明」である。その主観にしか見えないものを手がかりに、客観へと向かう思考の出発点が見えてくる。

 例えば、「時間がなかった」という言い訳。これは単純に考えれば「もっと早く着手すればよかった」で済まされるかもしれない。しかし、本当にそうだろうか。

・    タスクの割り振りに偏りはなかったか
・    業務の優先順位は明確だったか
・    想定外の割り込み業務はなかったか
・    助けを求める仕組みは機能していたか

 このように掘り下げていくと、「時間がない」は必ずしも個人の怠慢だけではなく、組織の設計や運用の問題にまでたどりつく。

 言い訳にはさまざまなタイプがある。感情的に発せられるそれらを「分類」し、「構造的に捉える」ことで、失敗の要因が可視化され、再発防止や改善提案へとつなげることができる。

 次に、代表的な6つの言い訳のパターンと、それぞれに対する再構成の視点を示してみたい。