
「言い訳するな」は本当に正しいか
「言い訳するな」
この言葉は学校、職場、家庭など場所を問わず、日常的に使われている。
潔くあれ、自責的であれ、前向きであれ――そんな意図が込められているように見えるが、私たちはこの言葉のもとで何が失われているかをそろそろ見直すべき時期に来ているのではないか。
なぜなら、言い訳とは失敗の中に潜む構造的な問題の断片であり、ていねいに扱えば提案に変わりうる素材だからである。特に人事や、マネジメントに携わる人にとっては、言い訳こそ宝の山という可能性がある。
だから、今、私たちは「言い訳するな」と切り捨てるのではなく、こう言い換えるべきだ。
「ちゃんと言い訳してね。いい提案になるかもしれないから」
まず、言い訳を否定する前に理解しておくべきは、言い訳には重要な心理的機能があるということだ。言い訳とは、単に責任逃れをするための言葉ではない。次のような人間らしい心の作用がそこには含まれている。
●自己肯定感を守る
失敗したとき、自分を責めすぎると心が壊れる。ありのままに直視するのがとても堪えられないような事実があるとして、一時的にでも「自分だけのせいではない」と思うことによって、自分の尊厳を保つことができる。
これは、心理学でいう「防衛機制」の一つであり、決して否定されるべきものではない。
●感情の言語化と整理
「時間がなかった」「やる気が出なかった」「納得できなかった」――これらは、心が体験した混乱や動揺を言葉として外に出すプロセスである。言語化によって、自分の感情を対象化し、距離をとり、冷静に見つめ直す準備が整う。