改善への6通りの道筋とそれを見つける視点

1. 時間的要因に基づく言い訳
 前述のとおり、もっとも頻繁に聞かれる言い訳のひとつが、「時間が足りなかった」というものだ。これは単なる怠慢の表明ではなく、タスクの過多やスケジューリングの不備、優先順位の誤認といった背景がある可能性が高い。

 このタイプの言い訳は、業務の所要時間、見積もりの精度や、業務の順序設計を見直す契機となる。「このタスクは本当にこの順でよかったか」「他の仕事と重なりすぎていなかったか」といった問いに昇華させることで、行動設計の質が高まる。

2. 能力的要因に基づく言い訳
「自分には難しすぎた」「荷が重すぎた」という言葉は、表面上は自己評価の低さや逃避に見えるが、その背後には業務とスキルのミスマッチが潜んでいる可能性がある。このタイプの言い訳をていねいに扱えば、「業務の割り振りは適切か」「支援体制や研修機会は十分か」といった組織設計の問いにつながる。単に個人の努力不足ではなく、人材の適切な配置と育成設計の問題であることが多い。

3. 対人関係的要因に基づく言い訳
「協力が得られなかった」「伝わらなかった」という言い訳は、往々にして、連携不全や信頼関係の欠如、コミュニケーションの構造的欠陥を指し示す。個人の能力ではなく、相互の役割や責任の所在のあいまいさ、共通目標の不在が根にあることが多いため、「チーム内の役割は明確だったか」「目標共有の場はあったか」といった問いに展開できる。言い訳の中に、協働設計の改善点が埋まっているのである。

4. 心理的・身体的要因に基づく言い訳
「やる気が出なかった」「体調が悪かった」という言い訳は、しばしば「自己責任」と考えられ、軽視されがちだが、これは心理的安全性の不足、業務量の過多、休息不足といった深刻な問題のシグナルである。掘り下げれば、「業務の配分は適正か」「心身に無理がかかる環境になっていないか」「心理的な支援の仕組みはあるか」といった問いが生まれる。

 このタイプの言い訳は、持続可能な働き方の設計へとつながる極めて重要な起点となる。