「強いガクチカ=内定」ではない
ここで、注意しておきたい点が一つあります。それは、人と比較してコンプレックスを持ってしまうこと。
「誰かが内定を取った」「他の人のガクチカと比べて自分は劣っている」という思考はマイナスでしかありません。
大切なのは自分がどう考えているか、何がしたいのか。人と比較するのではなく、自分がやってきたことをしっかりと言語化し、その企業や仕事が求めている資質や、人物像につなげて話すことです。
スポーツで全日本レベルの実績を持つ「強いガクチカ」を持つような学生でも、就職活動で苦戦するケースは珍しくありません。その理由は、個人の能力を過信しすぎて、組織の中でどう活かすかという視点が欠けているからです。
逆に「私にはガクチカなんて何もない」と言う学生でも、しっかりとした自己分析を行えば、必ず価値あるエピソードが見つかります。
「ガクチカがない」学生は?
今まで何もしていなかった人が就職活動を始める際に、よくぶつかりがちなのは「ガクチカがない」という問題です。何千人という学生を指導してきて、「学生時代に力を入れたことがなく、ガクチカが書けない」という学生には、毎年何人も出会います。
ですが、これは単に自己分析のやり方に問題があるだけと言っても過言ではありません。
また、多くの学生が「ガクチカ=大学時代の話」と思い込んでいますが、実際はそれだけではありません。中学時代、高校時代の話、仲間の話、アルバイトの話、そこから繋がっている「今」を語るのです。
大切なのは、今、なぜそのような価値観を持つようになったのかを過去にさかのぼって説明できることです。
例えば、大学時代に特段の活動をしていなかった学生でも、高校時代の部活動の話から始めて、「なぜ大学時代はそうしなかったのか」「そこから何を学んだのか」「それが今の自分にどう活かされているのか」という流れで語ることができれば、十分に説得力のあるストーリーになります。
仮に「何もしていなかった期間」があったとしても、それ自体をネガティブに捉える必要はありません。重要なのは、そのことがあったから、何が生まれたのかという成長ストーリーを語れること。
その意味では、失敗体験や挫折体験こそ、その人の人間性や成長性を示す貴重なエピソードになり得ます。
「失敗しました、終わり」ではなく、「その失敗から何を学んで、今はこういうことをやりたいと思っている」「継続して取り組んでいる」と言えれば、企業にとって魅力的な人材として映ります。
6月スタートでも決して遅くありません。時間は限られていますが、正しい方法で「質×量」を追求すれば、必ず結果はついてきます。今この瞬間から行動を起こし、継続すれば必ず道は開けるのです。
(本稿は、『絶対内定2027 自己分析とキャリアデザインの描き方』『絶対内定2027 エントリーシート・面接』の発売を記念した、オリジナル記事です)
株式会社ジャパンビジネスラボ代表取締役社長/キャリアデザインスクール・我究館館長/『絶対内定2027』シリーズ共著者、国家資格キャリアコンサルタント
青山学院大学経済学部卒業後、日本航空にて客室乗務員(CA)として勤務。その後、夫・杉村太郎のハーバード大学ケネディスクール留学に帯同し、帰国後はテレビ朝日・BS朝日にてニュースキャスターとして活躍。社会の最前線から情報を伝える立場を経験したのち、証券アナリストに転身。上場企業の経営者100名以上に直接インタビューを行い、企業分析や業界研究のスキルを培う。その後、大和総研にてマーケットリサーチ、営業支援、広報、そして新卒採用(インターンシップ設計を含む)や人材育成など幅広い業務に従事。採用と育成の“企業側”のリアルな視点を熟知している。2014年に株式会社ジャパンビジネスラボ代表取締役に就任。2023年よりキャリアデザインスクール「我究館」の6代目館長として、学生の「本気の就活」に伴走し続けている。多彩なキャリアと人生経験を活かし、「やりたいことが見つからない」「自分に自信が持てない」と悩む学生一人ひとりに寄り添い、我究(自己分析)を通じて“自分だけの道”を見つける支援を行っている。