
2025年首都圏中学入試の特徴として第214回、215回で「難関疲れ」を指摘した。一方で、中学入試で「英語」の能力を問う傾向が徐々に進んでいる。今回と次回は「英語入試」について考えてみたい。まずは、帰国生入試」から。24年入試での規制強化で、「国際生入試」と共にそのあり方に大きな変化が生じている。(ダイヤモンド社教育情報)
豊島岡女子学園「算数・英語資格」入試の衝撃
7月に入って、2026年の募集要項の発表が増えてきた。26年の首都圏中学受験動向については、四模試の受験状況をこれから見ていくことになるが、今回は、第214回(男子編)と第215回(女子編)で取り上げた「難関疲れ」の検証に続く25年入試の振り返り第2弾として、「英語入試」を取り上げてみたい。
25年入試の特徴として、第213回では「英語入試元年」とあえて呼んだ。最難関校である豊島岡女子学園が、英語資格利用で算数1科の筆記試験を導入したからである。1年ほど前、第189回で難関・上位校に中国籍の合格者が増えているという指摘をした。日本語が必ずしも得意ではない受験生も一般入試で最難関校に挑めるという点、難関校は4科という常識に少し揺らぎが見えた点を大きな転機と捉えたからでもある。
まずはこの豊島岡女子学園の入試結果を詳細に検討してみたい。その後、“元祖英語入試”である帰国生入試のこの3年間での激変に触れていく。次回は一般入試での「英語」の扱われ方について振り返る。かつては「帰国子女」と呼ばれていた帰国生の26年入試での変更点と展望について、現時点で判明している範囲で触れていきたい。最新の状況については、ダイヤモンド社教育情報のX(旧Twitter)やFacebookで適宜取り上げていくので、併せてご覧いただきたい。
3つの入試回を4科で行ってきた豊島岡女子学園は、25年入試では4科との併願可能な形で「算数・英語資格入試」を導入した。当日筆記試験を受ける算数が200点(同じ問題が4科では100点満点)で、これに取得している英語資格により最高100点が加算され、合計300点で合否を判定するというものだ。なお、帰国生入試は別途行っていないこともあり、4科では、「海外在留証明書」を提出した帰国生に対して総得点に5点加点する措置を取っている。
英語資格の扱いは、実用英語技能検定(英検)の取得級で、3級50点、準2級は英検CSE(Common Scale for English)スコアで70点と80点に分かれ、2級90点、準1級と1級は100点と換算されている。このみなし点については、26年に見直される可能性がある。英検では、準2級と2級の間に「準2級プラス」が新たに設けられている。
募集定員はいずれも若干名だった。実際には、3回合計で286人が出願して192人が受験、合格者数32人で実倍率6倍とかなりハードルが高かった。7割強の受験生は4科と併願している。4科を併願せず、算数・英語資格入試だけに出願して合格したのは5人だった。
得点データも公表されている。3回の入試での受験生平均(4科受験者平均)の得点率は、算数が54~57%(55~60%)だった。出願者の半分強は英検2級以上の取得者であり、英語の受験生平均は74~78%(点)だった。合格するには算数と英語合わせて70%以上(61~70%)の得点が必要だった。かなりハードな競い合いだったことがうかがえる。ただ、3級取得者からの合格者も出ている。英検3級以上を取得済みで、算数が得意なら、4科と併願することで合格の可能性が少し増すかもしれない。