厳格化された「帰国生入試」で受験者数半減も

 ここからは図1(11月入試)、図2(12月入試)、図3(1・2月入試)を参照しながら、「帰国生入試」について見ていこう。23~25年のいずれかで100人以上の受験生が集まった入試回が対象となっている。入試日は2025年度のものとした。例えば、図1の大妻中野は23年11月5日、24年10日、そして25年は22日となり、26年も22日で実施するといった具合に、帰国生入試は毎年のように日程が変わるからである。

 把握できている範囲では、首都圏1都3県にある私立中学121校が25年度に帰国生入試を実施した。受験者数の合計は23年度の6480人から24年度5891人、25年度5618人と減少傾向が続いている。受験者数ゼロもしくは数人の入試回も珍しくはない。なお、面接や入試科目に英語を含まない入試内容のみの帰国生入試は18校にとどまる。帰国生入試イコール英語という受け止め方は、あながち間違ってはいない。

 23年度から25年度の間に100人以上の受験者数を記録した入試回を対象としている図1~図3には20校が載っている。帰国生入試を行った学校の6校に一つの学校の入試で、過半数の受験生を集めている寡占状況がうかがえるのだが、その割合は、23年度の75%から24年度は67%、25年度は63%へと年々低下傾向にある。

 どの学校の入試回に受験生が集まっているか、特に23年度と25年度を比べて受験生がどのように動いているかを各図でご覧いただきたい。24年度がターニングポイントとなっている。

 こうした変化の背景には何があるのか。元は海外からの帰国子女が主な対象だった帰国生入試だが、インターナショナルスクールなど国内にある非一条校で学んだ英語の得意な受験生が、こうした入試を利用、“国際生”と称してこうした受験生を積極的に集める動きも一部には見られた。帰国生入試は、一般入試解禁日よりだいぶ早い年内入試として主に実施されており、優秀な受験生を“青田買い”する側面もあった。

 そのため、東京都では帰国生入試の受験条件を24年度より厳格化、「海外滞在1年以上、帰国後3年以内(の入試日)」とした上で、入試解禁日も11月20日以降とすることにより、本来の趣旨に戻すことになった。この要件に合わない“国際生”は、東京都内の学校に関しては一般入試と同じ2月1日以降に受験することになる。その影響は顕著で、23年度に比べて25年度の受験者数が半減しているような入試回も目に付く。

 受験者数の変動が激しい2つの学校について見ておこう。まず、この3年間で受験者数が半減しているかえつ有明から。25年度は11月22日にAdvancedと国数2科の[Regular選考]を、12月7日に[Honors選考]をそれぞれ実施してきた。

 これを26年度からは以下のよう大きく組み替える。11月20日と12月7日には[Honors/Advanced選考]を、11月20日午後には[Regular選考]を実施する。入試の名称も国際生から「帰国生」に切り替わる。Honors/Advancedの英語問題は準1級から2級と大学入試レベルが問われなど、かなりハードルは高い。

 多くの帰国生を集めてきた山脇学園は、2月に3回設けられている[英語入試](英検3級相当以上と国算2科)と合わせて55人を募集する。帰国生入試は英検準2級相当以上の取得を求めるなどこちらもハードルは高い。

 26年度は、大きく減少した[帰国生I期]は11月22日午後に移動する。これまでAとBに分割していた[II期]は1回の実施とし、英語のエッセイと日本語の作文を課す。23年度と24年度の2月1日から25年度より12月23日に移動したことで、II期は受験者数が飛躍的に増加している。

 他に、11月20日か21日に英語のスピーチ、日本語の音読・意見口述を課す帰国WEB入試も行う。これらの組み合わせで、山脇学園は帰国生と国際生など高学力層の取り込みを図ることになる。