「休むと周りから仕事熱心じゃないと見られるかも」。
年5日の休暇取得が義務化された現代においても、職場には休暇を取ることに後ろめたさを感じる人がいる。こうした休暇を取得することに対する否定的な規範がチーム内に浸透している「多元的無知」のムードが広がり、メンバーが心身ともに消耗すると、バーンアウトのリスクが高まることになる。チームリーダーは、この「休みにくくて消耗する職場」のネガティブな文化をどのように打開し、メンバーのウェルビーイングを向上させ、チームのパフォーマンスを高めることができるだろうか。
そこで参考にしたいのが、世界中で行われた経営学、心理学、経済学等の研究成果をもとに、グロービス経営大学院の教授陣が協力して書いたチーム・ウェルビーイングの教科書。「チームリーダーにできるちょっとしたコツ」をまとめた一冊『職場を上手にモチベートする科学的方法――無理なくやる気を引き出せる26のスキル』。
今回は、同書から特別に抜粋・再編集し、リーダー自身が率先して休暇を取り、その休暇中に仕事から心理的に距離を置く(デタッチメント)ことの重要性を提示する。
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なかなか休めずに休暇取得率が低空飛行
梅雨明け間近な7月のオフィスで、ともに営業部のチームリーダーである八田さんと安住さんが、こんな立ち話をしています。
安住さん「もうすぐ夏休みシーズンだね。ちゃんと休みは取れそう?」
八田さん「私がしっかり休まないとメンバーも遠慮しちゃうし、一応予定はしているよ。安住さんはどうなの?」
安住さん「休暇は予定しているよ。でも、進行中の案件が気になって、休み中もついメッセージを確認しちゃうんだよね」
八田さん「ああ、それはわかるなあ!」
休み下手といわれる日本人ですが、年5日の休暇取得を義務付けた政策の後押しもあり、年次有給休暇の平均取得率は6割超(2023年)と上昇しつつあります[1]。
とはいえ、現場レベルで見ると、休暇を取るのがためらわれる雰囲気の職場もまだまだ多いのではないでしょうか。また、安住さんのように、休暇中も仕事のことが気になってしまい、あまり気が休まらないという方も少なくないでしょう。
仕事に過度のエネルギーを費やしてバーンアウト(燃え尽き症候群)に陥ると、ワーク・エンゲージメントの低下にもつながります[2]。また、バーンアウトを引き起こすと離職リスクが高まることも明らかになっています[3]。なんとかして、燃え尽きることのない休み上手なチームをつくりたいものです。
そのためには、チームリーダーとして何をすればよいのでしょうか。



