なぜ日本のサーチファンドは“社会的インパクト”を生み出せないのか?市場拡大を阻む3つの課題と突破口写真はイメージです Photo:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

新たな選択肢としての第三者承継の価値

 最終回となる今回は、黎明期から発展期に差し掛かろうとしている日本のサーチファンド市場について、今後の発展に向けた展望と課題を解説したい。

 まず、日本のサーチファンド市場の成長の可能性および社会的インパクトは非常に大きいと考えている。当社は2020年からサーチファンド投資に取り組んでいるが、中小企業オーナーや経営者を目指すアントレプレナー人材、出資者からサーチファンドに寄せられる期待は大きく、より大きな展開を求められていると強く感じている。

 例えば「サーチャーにチャレンジしたい」と当社の支援に関心を示したサーチャー候補は、20年以来、千人近くに上る。サーチファンド投資を事業として始めた当時は、サーチャー人材からの反響が最も未知数だったが、これはうれしい誤算だった。最近は、著名な企業や大企業で活躍している人材からの応募が増えている印象もある。中小企業のM&Aというアントレプレナーキャリアに可能性を感じ、リスクを取ってでも挑戦したいという人材が多くいることは間違いない。

 また、中小企業オーナーに対してサーチファンドが提供できる価値という意味でも手応えを感じている。第三者への事業譲渡を検討するオーナーの中には「事業会社の一部門になるような譲渡や、誰が経営するのか分からないPEファンドへの譲渡には抵抗がある」という人もいる。そのようなオーナーから「サーチファンドであれば社長として誰が来てくれるかが分かりやすく、譲渡候補として検討したい」と言われることも少なくない。第三者承継の選択肢として、事業会社やPEファンドしか選択肢がなかったなか、「後継者候補個人」に譲渡できるサーチファンドという選択肢が生まれたことは、中小企業オーナーにとって大きな価値であると実感している。