これに対して、つい言ってしまいがちなのが、「さっきも言ったでしょ!」の一言。何度も聞いているという自覚がない本人は、(拒絶された……)(急にきつく言われた)と、ショックを受けてしまいます。
同じことを聞かれても
それを指摘したら逆効果
たとえそれが事実だとしても、認知症疑いの人に事実を突き付けることは得策ではありません。「同じ質問を何度もしている」ということは、こちらの心の中だけに留めておけるとよいでしょう。
望ましい対応は、聞かれるたびに答えを教えることです。その際、本人の感情を動かすようなエピソードを交えて伝えたり、話を要約して伝えたりすると、より記憶に残りやすくなります。
たとえば、「あれ、明日の予定はなんだっけ?」とくり返し聞かれたら、「明日は10時から病院だよ」「その前に○○ちゃんのところに寄ってから行こうか」といった感情を動かすようなエピソードを付け足して答えられるとよいでしょう。
あるいは、病院で受けた説明を忘れて、薬の飲み方を何度も聞いてくる場合は、「朝ごはんの前に1錠飲めばいいってことだね」などと要約して伝えてあげることで、より記憶に残りやすくなります。
前に伝えた言い回しではない方法で伝え直すと、頭の中に残りやすくなります。印象に残りやすいように伝えるとよいでしょう。
本人にとっては1回目の
気持ちで聞いてあげる
同じ話題を何度もくり返し言ってくるようになるのも、「近時記憶」の苦手が原因である可能性が高いです。これも、認知症疑いの段階でよく見られる症状の1つです。
同じ話題を何度も言われているほうは、ついイライラしてしまい、「またその話?」「2回目だからやめてよ」などと、話を途中で遮りたくなるかもしれません。
しかし、認知症ケアを「ラク」に進めていくうえでは、「本人からすれば」という視点を常に持つことが大切です。「本人からすれば1回目」の話に対しては、「え!そうだったんだ!」「それはすごかったね」などと、拒絶していないことが伝わるような言葉かけをしましょう。
あるいは、「○○だったんだね」とオウム返しをすることも効果的です。