シニア夫婦写真はイメージです Photo:PIXTA

入浴を嫌がる、夜中に徘徊する、排泄の失敗が続く――。認知症中期の人の代表的な行動だが、あなたの対応次第で事態はどちらにも転がる。認知症ケアの第一人者・川畑智氏が、どんどん悪循環に陥るNG対応と、本人も介護者もラクになる正解対応を、自身の体験談を交えながら伝授する。※本稿は、川畑 智『認知症の人がスッと落ち着く言葉がけ〇×ノート』(SBクリエイティブ)の一部を抜粋・編集したものです。

認知症の人が
入浴拒否する理由

 認知症の人によく見られる「入浴拒否」

 入浴を嫌がる理由はさまざまあり、認知症疑いや初期の頃から入浴するのを面倒くさがったり、記憶の苦手から「入浴した」と思い込んでしまい、「もうさっき入ったからいい」と拒否したりということが起こりがちです。

 さらに認知症中期になると、それまで当たり前にできていた入浴時の動作や操作がむずかしくなります。シャワーとカランの切り替えや温度調節のボタン操作も分かりづらくなる。

 まるで航空機のコックピットで見慣れないボタンだらけの環境にいるような感覚に陥ってしまうのです。でも、そのことを家族や介護者にすぐには教えてはくれません。

 私が介護を担当していた方も、「入浴時はずっと水シャワーで洗っている」と分かったのは、担当し始めてしばらく経ってからのことでした。

「水しか出ないから」とおっしゃるのですが、もちろんちゃんとお湯は出ます。温度調節用のつまみを回す操作が分からなかったということを、つじつま合わせで理由にしていただけでした。

 また、体や髪をうまく洗えなくなったり、脱衣所で体を拭く動作がスムーズにできなくなったりし始める時期です。