「人生100年時代」といわれ、日本人の平均寿命がのびる一方、要介護者の増加で人手不足が懸念されています。働き盛りの介護離職はいまも問題となっていますが、「親の介護は子の務め」という日本人特有の家族意識にとらわれた介護は、決して双方のプラスにならないと川内さんはいいます。川内潤さんの『親の介護の「やってはいけない」』(青春出版社)から、介護意識を変える「やってはいけない」をご紹介します。
いつまでも元気でいてほしいのは子の願望
「お父さん、リハビリ頑張ろうね! 前みたいに歩けるようになろうね」
子どもは、高齢の父親、あるいは母親が骨折して入院したりすると、ついこんなふうにハッパをかけてしまいます。でも、それは本当に親のためになっているでしょうか。
介護する子どもの側は、いつまで経っても、今まで通りの元気な父親、母親でいてほしいと思うものです。ですから、整形外科の先生から、「リハビリすれば、なんとか歩けるようになるかもしれませんよ」と言われれば、頑張ってリハビリさせようとします。でも、お父さん、お母さんはどう思っているのでしょう。同じ気持ちなのでしょうか。
もし、本人が「前の状態に戻りたいから頑張る」と言うのなら、それでいいと思います。でも、子どもの前では言えないだけで、心のなかでは「もう、そんなつらい思いをしてまでリハビリなんてやりたくない」「それで歩けなくなったとしても仕方ない」と思っているかもしれませんよね。「頑張ってリハビリしようね」という言葉が、実は本人につらい思いをさせているかもしれないのです。