いつまでも親に元気でいてほしいのは子の願望高齢者がいる家族とやりとりをしていると、本人の意向などそっちのけで、家族が「ここに手すりをつけてくれ」「あそこの段差をなくしてほしい」など言ってくる。その結果高齢者はどうなるのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「人生100年時代」といわれ、日本人の平均寿命がのびる一方、要介護者の増加で人手不足が懸念されています。働き盛りの介護離職はいまも問題となっていますが、「親の介護は子の務め」という日本人特有の家族意識にとらわれた介護は、決して双方のプラスにならないと川内さんはいいます。川内潤さんの『親の介護の「やってはいけない」』(青春出版社)から、介護意識を変える「やってはいけない」をご紹介します。

いつまでも元気でいてほしいのは子の願望

「お父さん、リハビリ頑張ろうね! 前みたいに歩けるようになろうね」

 子どもは、高齢の父親、あるいは母親が骨折して入院したりすると、ついこんなふうにハッパをかけてしまいます。でも、それは本当に親のためになっているでしょうか。

 介護する子どもの側は、いつまで経っても、今まで通りの元気な父親、母親でいてほしいと思うものです。ですから、整形外科の先生から、「リハビリすれば、なんとか歩けるようになるかもしれませんよ」と言われれば、頑張ってリハビリさせようとします。でも、お父さん、お母さんはどう思っているのでしょう。同じ気持ちなのでしょうか。

 もし、本人が「前の状態に戻りたいから頑張る」と言うのなら、それでいいと思います。でも、子どもの前では言えないだけで、心のなかでは「もう、そんなつらい思いをしてまでリハビリなんてやりたくない」「それで歩けなくなったとしても仕方ない」と思っているかもしれませんよね。「頑張ってリハビリしようね」という言葉が、実は本人につらい思いをさせているかもしれないのです。