
「同じことを何度も聞いてくる」「同じ話を繰り返す」「片づけや整理整頓ができない」こんな様子が見られたら、認知症の初期症状の可能性が高い。とはいえ、いざ目の前で起こったとき、どんな言葉をかければいいのか戸惑う人も多いだろう。認知症ケアの第一人者・川畑智氏が、認知症の人へのNGな声かけを解説する。※本稿は、川畑 智『認知症の人がスッと落ち着く言葉がけ〇×ノート』(SBクリエイティブ)の一部を抜粋・編集したものです。
たった数分前のことを
思い出せないのは要注意
認知症疑いの段階では、少し前に聞いたことをくり返し聞いてくるケースが増えていきます。加齢によるちょっとした「もの忘れ」の度を越して、周りが困惑するほどくり返し聞いてくるとしたら、認知症の可能性を疑う必要があるでしょう。
記憶の中でも、長い間保持してきた「長期記憶」は、認知症の中~後期まで維持される傾向にあります。
一方で、直前に起きたことを記憶する「即時記憶」や、少し前の出来事を記憶する「近時記憶」は、認知症の早い段階で苦手が生じます。
順序としては、「近時記憶」→「即時記憶」の順番で苦手になりやすく、認知症「疑い」の段階で苦手が出ることが多いのは「近時記憶」です。
「近時記憶」に苦手が生じている具体例としては、午前中に行った病院で医師が説明してくれたこと(薬を飲む回数や生活のアドバイスなど)を午後には忘れる、昨日何を食べたか覚えていないなどです。
「ちょっと前に質問したことを忘れて、また同じ質問をしてしまう」というケースも「近時記憶」の苦手が原因と考えられます。