
ご飯を食べていないと駄々をこねる認知症の人に、「さっき食べたでしょ」と返すのは心理学的に最悪。相手の心を深く傷つけているかもしれないからだ。大切なのは、正論を押しつけることではなく、不安に寄り添う言葉かけ。認知症の人を本当に落ち着かせる接し方とは?※本稿は、川畑 智『認知症の人がスッと落ち着く言葉がけ〇×ノート』(SBクリエイティブ)の一部を抜粋・編集したものです。
「食べていない」と言うのは
一緒に食べたいから
認知症の人が、食べたのに「食べてない」と主張をするのは、記憶に関わる問題が生じているため。
記憶障害の中でも、とくに短期記憶が失われていくと、食事をした直後でも、その記憶が保持されずに「まだ食べていない」と感じてしまいます。
また、見当識障害により、時間や状況を認識する感覚が低下してくると、朝食を食べたことが昼や夜になると分からなくなり、夕食を前にして、「今日はまだ何も食べてない」などと言い出すことも。
このときの対応として望ましくないのは、「もう食べたでしょう!」「食べたからないわよ!」と真実だけを伝えることです。「何言ってるの?」と、認知症の人を否定する言葉かけも避けましょう。
実際、本人の頭の中では、「食べていない」ことが事実なのです。そのことを否定しても、不安感が増すだけです。
認知症の人が、食べたのに「食べていない」と言い出したら、何よりも、本人の不安に寄り添い、安心感を与えてあげることが大切です。
コツは否定せずに、いったん話に乗ってあげること。「あれ?食べてなかった?」「そうか、じゃあ何を食べようか?」「何を食べたら、お腹がいっぱいになりそう?」などと、話を合わせてあげる。