家族や介護者に対して「できないことを知られたくない」という思いから、入浴を拒否するようになることも多くあります。
ほかにも、入浴の出入り口の段差が怖いと訴える人や、湯舟の深さが分からないので「吸い込まれて落ちていきそう」と、恐怖感を入浴したくない理由として上げる人もいました。
そんなとき、「なんで入らないの!ダメでしょ」と怒ったり、「いい加減、お風呂に入ってちょうだい!」と入浴を強制したりすると、ますます入浴拒否が進んでしまう可能性もあります。
入浴拒否の背景には
心の理由と体の理由がある
心理的な理由で入りたがらないときは、「明日、病院で検査だから、きれいにしておこうか」という言葉かけで、入浴する気分になってくれる人もいます。「汚れていると先生に申し訳ない」「迷惑をかけるから」という切り口で入浴を促すと、理解してもらえることも多いもの。
また、「頼まれていたお風呂が沸いたよ!」「お母さん、今日は一番風呂をどうぞ」などと、ポジティブな言葉かけも効果的ですね。
入浴動作や操作のむずかしさから入浴を拒んでいる場合は、入浴時のサポートが欠かせません。
その際、「一緒に入りたいから」「背中を流してあげたいから」と、あくまでも介護する人が「自分がそうしたいから」という理由で一緒に入浴することを提案すると、誘いに乗ってくれる確率が上がります。
認知症の人の不可解な行動は
過去の習慣が原因だった
認知症の人は、昼夜逆転や睡眠障害が起こりやすく、夜中に行動し始めたり、早朝に起き出したりと、生活リズムが崩れてくることがあります。
睡眠不足で本人の心身にも負荷がかかりますし、それに付き合う周囲のストレスも大きくなりがちです。
昼夜逆転が起こるのは、実際の時間と体内時間の感覚がズレてしまい、日中と夜間の区別がつきにくくなるため。
ただ、そのときに認知症の人が起こす行動には、過去の習慣などからくる何らかの理由や目的があることが多いというのが私の経験から言えることです。
たとえば、深夜に急に「仕事に行く」と言って支度を始める人もいます。
そんなとき、「まだ夜でしょ!寝てちょうだい!」と怒っても、時間感覚がズレている本人には理解できませんし、「明るくなってからにしよう」となだめようとしても通じません。