普通のスピードでは理解しにくくなるため、認知症の人に話しかけるときは、単語と単語の間を空けてゆっくりと話すことを心がけましょう。できるだけ一度に伝える情報量を少なくすることもポイントです。
また、認知症の人は、言葉を理解しづらい一方で、相手の表情や声のトーンにはとても敏感です。
話を理解しようとがんばっているのに理解が追いつかずに、相手が「分かっているの?」「聞いてるの?」というような不審な表情を見せると、認知症の人はとても不安な気持ちになります。
同時に、もっとがんばってなんとか話を理解しようとして、とても疲れてしまいます。
言葉が聞き取れないぶん、周囲の人が話しかけるときは、言葉の内容以上に優しく明るい表情を心がけることも大切です。
聞き取りが苦手になってくると、話す内容や言い回しを工夫するだけでは伝わらないことも増えていきます。
ジェスチャーを見せてから
話しかけると伝わりやすい
表情も含めて視覚情報のほうが、より理解してもらいやすくなるのがこの時期の特徴。そこで、積極的に取り入れたいのがジェスチャーです。
茶碗を持って箸を口に運ぶ動きをしてみせながら「ごはん、食べる?」と聞いたり、行く方向を指差しながら「あっちに行こうか」と誘導したりするなど、多少大げさに身振り手振りで説明すると伝わりやすくなります。
その際、ジェスチャーは言葉より少し早めに出したほうが、頭の中に届きやすいという特徴があります。視覚と聴覚の2つの情報処理を同時に求められるより、まずは視覚(ジェスチャー)、その後に聴覚(言葉)という順番のほうが、脳が情報を処理しやすいためです。
名前を呼ぶときも、いきなり呼びかけると驚かれてしまったり、声が届かずになかなか気づいてもらえなかったりするものですが、まずは相手の視界に入って、笑顔で手を振ってみてください。その後、「○○さん!」と呼ぶと気づいてもらいやすくなりますよ。